男性は必要のない手術で排便障害になったとして、病院を提訴している。一方の病院側は、「誤診ではなく、過失はない」「手術前に化学療法をしたので、がんが消えていても不思議はない」と反論している。
2015年には北海道の総合病院で胃がんと診断された患者が胃の5分の4を切除した。その後患者の切除部分を病理医が検査したところ、がんが発見されなかった。
そうした事態を少しでも遠ざけるために、患者側は何ができるのだろうか。自治医科大学附属病院の病理診断部長・福嶋敬宜氏はこういう。
「がん告知を受けたものの、疑問を感じた場合は、まず診断根拠についての説明を聞くことです。『病理診断書』を見せてもらいましょう。それでも納得できない場合は、その病理診断書のコピーをもらって、別の病院にセカンドオピニオンを求めるのも選択肢の一つです」
近畿大学医学部附属病院・臨床研究センター講師で病理専門医の榎木英介氏は、誤診の1つの要因になるのが病理医に患者の情報が伝わっていないケースだという。
「その患者の既往歴や臨床記録などを病理医が把握できていれば、良性か悪性かの正しい判断を下すうえで大きな助けとなります。しかし、現実には検体だけが送られてきて、他の情報は一切ないというケースが少なくない。
病理医レベルで誤診が起きる一番の理由は、担当医とのコミュニケーション不足だと思います。病理検査が必要だと知らされた時は、それらの情報を病理医にも伝えてもらうよう患者さんから担当医に頼むのも誤診を防ぐ方法だと言えるでしょう」
医療技術が進歩した今でもがんは死に直結する病気だ。「あなたはがんではありません」と告げられれば安心し、「がんが見つかりました」と言われれば不安になる。しかし、どちらの宣告も「100%ではない」という前提を持つ必要がありそうだ。
※週刊ポスト2018年6月1日号