こうした“分断”が続くうちに、かつて1万人近くいた生月の信徒は今、300人にまで減った。ただ、「カトリック」か「かくれキリシタン」か、という対立は、もはや何も生み出さない。地域の和解は、これからの課題だ。金子氏はいう。
「精神的なものを含めて、過疎に悩む地域の振興をしていかなければいけないでしょう。信仰の担い手は仏教など他宗教でも急速に減ってしまっている。世界遺産登録はゴールではなく、ここから始まると思うのです」
世界遺産登録が、単なる“教会の観光資源化”で終わってはならない。先祖が命がけで守ってきた信仰を後世につないでいこうとする人々の営みに、光が当たる機会ともなってほしいと願っている。
【プロフィール】ひろの・しんじ/1975年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒。神戸新聞記者を経て2002年猪瀬直樹事務所に入所。2015年フリーとなり、昨年末『消された信仰』で第24回小学館ノンフィクション大賞を受賞。