そして、その人物設定は、本作の最大の見どころである密室殺人のトリック解明の場面でも活かされている。ネタバレになってしまうので、詳しくは書けないが、密室殺人のトリック自体は、画期的とは言えない。だが、それを解明する手段が、ラジオでディレクターをやっていた人間にしか思いつかない斬新なものなのだ。
また、著者の作品のもう一つの特徴は、登場人物のモデルをラジオ局の同僚にしていることだ。しかも、著者は本名の一部を残す形で登場させているので、誰をモデルにしたのか、すぐに分かる。例えば、本作で殺される西園寺沙也加のモデルは、ニッポン放送の現役女子アナだ。本書を読んでいると、著者がこの女子アナを好きだったのがよく分かる。まさにオタクの本領発揮だ。
今後、著者が大ブレイクしても、ニッポン放送を辞めることはないだろう。TV局と比べて所帯の小さいラジオ局は、人間関係の坩堝で、ネタ作りに事欠かないからだ。
※週刊ポスト2018年7月13日号