そして前述の上半期のシェアの公表では、PBの受託製造分を計上するかしないかで揉めた。噛みついたのがアサヒとサントリー、噛みつかれたのがキリンの構図だ。キリンのある幹部はこう語っていた。
「PB受託製造分は除いたものでのシェア公表となると、サントリーさんやサッポロさんがこれまでやっていたPBはシェアにずっと含んでいたので、それはどうなるのか? といった議論もありました」
ビールメーカーは装置産業なので、ビールの販売量減少に長年、歯止めがかからない中、シェアで負け戦を続けていくと最悪、自社の工場リストラや閉鎖にも発展しかねない。工場の稼働率をアップ、ないし維持していくには、自社の単一商品の生産や混流生産だけではおぼつかない。
そこで、メーカー側、流通側、どちらが持ちかけるかはケースバイケースながら、工場稼働率の観点から考えても、PB商品の扱いは増やしていかなければいけないのが実情だ。ただし、NB商品と違って流通大手とタッグを組むPB商品は、メーカーにとって利幅が薄いのも事実だ。
逆に、セブン&アイやイオンなどの流通大手側から見ると、広告宣伝等にもほとんど投資しなくていいPB商品のほうが、NB商品を扱うよりも利益率は高いし、低価格に設定できる。
もっとも、イオンはかつてのダイエーとよく似た低価格志向だが、売り上げより収益を重視してきたセブン&アイ、特に圧倒的な店舗数と商品開発力があるセブン‐イレブン・ジャパンでは、店舗内のあらゆる取り扱い商品をPBのセブンプレミアムにしてしまいたい、というのが本音ではないだろうか。
また、コンビニでは売れ筋から漏れると早いサイクルで売り場から排除されてしまうのが常だが、PBであれば、よほど売れ行きが悪くない限り、毎年のように改良を重ねながら商品棚にとどまり続ける。冒頭で触れた「ザ・ブリュー」もその1つといえるだろう。
そうした状況を見る限り、流通大手とビールメーカーのタッグはこの先もますます進んでいくだろう。
●文/河野圭祐(ジャーナリスト)