一方、同じ朝8時台に放送している民放各局のワイドショーは、どうだったのでしょうか。
日本テレビ系の『スッキリ』、テレビ朝日系の『羽鳥慎一モーニングショー』、フジテレビ系の『とくダネ!』、TBS系の『ビビット』。6日の第一報から数日間は各局ともに大きく扱いましたが、すぐにトーンダウン。トップでの扱いは激減し、短時間のコーナーとなり、募金を案内するだけで終わる日が増えました。
19日以降は、『ビビット』が時折コーナーを設けるだけになるなど、すっかり「終わったこと」のような状態に。その間、主に報じられていたのは、「タイの洞窟に少年が閉じ込められる」「サッカー・ロシアワールドカップ」「東京五輪の日程」。そして現在は連日に渡って「猛暑」が報じられています。
猛暑の話題ばかりになったことが象徴しているのは、人数の原則。現在、より多くの人々に関連し、興味を持つ話題を扱うのは当然ですし、民放は経営上、視聴率が重要なことは言うまでもありません。ワイドショーが視聴率を獲得し、番組を存続させるためには、どんな話題であっても見応えが求められ、「裏番組よりも衝撃や感動を与える映像を」という基準で制作されるものです。
そのため、レポーターは被害状況をオーバーアクションで伝え、画面には衝撃的な映像と「犠牲者〇人」のテロップが映されるなど、インパクト重視の番組構成に。西日本豪雨の被災地中継でも、どきどき被災者を困惑させたり、視聴者に「プライバシーの侵害では?」と感じさせたりするシーンがありましたが、それらは制作スタンスによるものなのです。
◆「少しずつでも長期の支援が必要」というスタンス
コンプライアンスの意識が強い現在では、リポーターやスタッフが細心の注意を払っていることもあり、決して民放のワイドショーが良くないということではありません。
ただ、『あさイチ』の西日本豪雨に関するスタンスは、「NHKは公共放送」という意識によるものであり、民放とは一線を画すもの。「視聴率が求められる民放のような短期集中の放送ではなく、公共の福祉のために少しずつでも長期に渡って放送していこう」というスタンスに見えるのです。
だから今後も『あさイチ』には、トップの扱いでなくなっても、短い放送時間になっても、西日本豪雨関連のコーナーを続けていくことを期待したいところ。スタッフはもちろん、話術に長けた博多華丸・大吉の力で、被災者の方々に情報と元気を届けるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。