芸能

『サバイバル・ウェディング』と波瑠自身のサバイバルを考察

時間は限られている?(番組公式HPより)

 作品への評価と役者の評価は必ずしも一致しない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がこのクールで感じたミスマッチの最たる例が波瑠、なのだという。

 * * *
 陶器のような白い肌に大きなアーモンドアイ。化粧っけを抑えた透明さ、ショートヘアの知的ビューティー…NHK連続テレビ小説『あさが来た』で国民的評判をとった波瑠は、私の中でそんな女優として立ち現れました。

 『あさが来た』のヒロイン・白岡あさは、幕末から大正の時代にかけて様々な困難に立ち向かいしなやかに実業を切り盛りした女性起業家。あさを演じた波瑠の立ち姿が実に清々しく、毎朝画面で会うのが楽しみでした。

 『あさが来た』は国民的な支持を得て、波瑠の評判もうなぎ登り。だから、後に民放ドラマで「ラブコメ」の主役をやる、しかも不倫劇と聞いた時は、ちょっと心配になりました。せっかく波瑠が獲得した、しなやかで強く清廉なイメージが崩れてしまいわないかと、まるで親類縁者にでもなったかのように気を揉んだのです。

 しかし、しばらくすると、それが杞憂だとわかりました。

『あなたのことはそれほど』(TBS)で波瑠が演じた主人公は、屈折や罪悪感を抱くことなく夫以外の男・元同級生に惹かれる妻。しかし単なるおバカさんではなかった。ある種の滑稽さや空虚さ、妙なリアリティを感じさせてくれた。全体を俯瞰するようなクールな距離感も。波瑠の新たな姿に出会った気がして、正直嬉しかったのです。

『あなたのことはそれほど』は、当初特にテーマが話題となり、視聴者からの拒否反応は大きいものがありました。「あまりにゲス」「感情移入できない」「波瑠はなぜこんな役を引き受けたのか」という批判も。こうした拒絶反応、今から思えば朝ドラの「あさ」像と大きくかけ離れていたがゆえ、のものだったでしょう。

 驚かされたのは、それに対して真っ正面から発せられた波瑠の言葉でした。

「面白いと言ってくださる方も、不倫劇を見ていて気分が悪くなる方もいらっしゃると思いますが、私達はただこのドラマを観てくださったことに感謝するだけです。こういう内容の作品ですからね。しょうもないとか馬鹿とか最低とか言われても、観て感想を抱いてもらうっていうことで私は報われるような気持ちです」。

 よほどバッシング的な意見が多かったのでしょう、こうした記述も本人のブログにありました。

「私は、自分が何か得をするためにこのお仕事をしてるつもりもないので、わかりやすい言葉で言うなら損の連続になったとしてもいいのです」「苦労が大きければ大きいほど何かを自分の中に残してやる〜って」「意味のない時間なんてないです」

 役者・波瑠の強い意志。毅然とした態度。本人自身「主人公に共感はできない」という役を思い切り、いわば役者として別の人格を味わい楽しみながら演じきった。一部の人に不快感を与えるほどの演技で。「自分」というものを確固として保持している波瑠に、他に類型がいない女優さんだな、と魅了されました。

『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(関西テレビ)、『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日)、『もみ消して冬』(日本テレビ)等、刑事や弁護士などの役柄も次々にこなし、一方『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)では、毒親と娘の関係という緊張感に包まれたテーマに斬り込み好演。

 仕事が途切れない人気者となって、そしてこの夏。今放送中のドラマが『サバイバル・ウェディング』(日テレ系・土曜22:00)。波瑠は主役の黒木さやかを演じています。その内容は、しかし……。

関連記事

トピックス

4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
吉田鋼太郎と夫婦役を演じている浅田美代子(『あんぱん』公式HPより)
『あんぱん』くらばあ役を好演の浅田美代子、ドラマ『照子と瑠衣』W主演の風吹ジュン&夏木マリ…“カッコよくてかわいいおばあちゃん”の魅力
女性セブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)
宗教学者・島田裕巳氏が皇位継承問題に提言「愛子天皇を“中継ぎ”として悠仁さまにつなぐ柔軟な考えも必要だ」国民の関心が高まる効果も
週刊ポスト
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン