芸能

八名信夫が語る悪役論「悪役が下手なドラマはつまらない」

悪役としての凄みが漂う八名信夫

 泣く子も黙るこわもてで、俳優集団「悪役商会」主宰者として知られる八名信夫(82)。プロ野球の投手として活躍後、俳優に転身。映画『網走番外地』『仁義なき戦い』などに出演し、名悪役として確固たる地位を築いてきた。そんな八名が考える悪役としての美学とは――。

――そもそもなぜ悪役俳優になったのでしょうか。

八名:おれは東映フライヤーズ(現日本ハム)に投手として入団したんだけど、試合中に腰を骨折してね、現役を引退せざるを得なかったんだよ。そうしたら、東映本社から「君は、映画俳優として契約するように。大川博社長の命令だ」と言われた。 映画俳優が何かもわからず、おれは「はい」と答えた。そういう時代だったからな。

 おれは身長が182cmあって大きいから、主役より目立たないように、いつも遠くに追いやられてさ、エキストラと扱いが変わらないわけです。ひたすら歩かされるし、カメラに写らないし、おもしろくねえな、辞めようかなと思ったんだけど、引きとめられていた。

 先輩俳優を見ているうちに、気づいたんだよ。悪役だったら、主人公の近くで切られるから、カメラに写るなって。俳優をするなら、画面に映らないと意味がないからね。それで監督に「小さいやつよりも、体格がいいおれが倒れたらけむりがたつから、迫力があっていいだろう」と談判しに行ったの。そうしたら、「お前の言うことも一理ある、こっち来て死ね」と(笑い)。これが悪役の始まり。

――悪役は八名さんに向いていた?

八名:主役は喜んだね。小さいやつを倒したって、主役がいじめているように見えるから、大きいのを倒す方がいいと(笑い)。野球をやっていたおかげで運動神経があるから、主役にけがをさせなかったのも評価されたよ。

 立ち回りで切り合いをするとき殺陣の手を間違えるとしたら、だいたい主役。主役が手を間違っても、うまいこと受けたりすることが悪役には大切なんだよ。それが認められたんだな。「八名はおれにけがをさせんぞ」「安心して立ち回りができる」と、鶴田浩二さん、若山富三郎さん、高倉健さん、そういう人たちに指名されるようになった。それから認められるようになったね。

 主役を引き立てるには悪役が重要だって、悪役を大切にしてくれるようになった。ドラマというのは悪役によって、おもしろくなるかが大きく左右されるんです。悪役が下手なら、そのドラマはつまらなくなる。「高倉健さんがかっこいいのは、おれがちゃんとした芝居をしているからだ」と自分に言っていたね(笑い)。

――主役にない、悪役のいいところはどこですか?

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン