放送後のフィーバーとしては異例の状況が続いていますが、特筆すべきは、番組グッズの量産とバカ売れ。放送後にも関わらず次々とグッズを作り、それがことごとく売れているのです。
終了直後に発売されたLINE公式スタンプはすぐにランキング1位となったほか、グッズ第1弾として「天空不動産オリジナルキャラ『てんくぅん』ファイル」「春田が牧に送った営業虎の巻アクリルキーホルダー」「ポストカードセット」を発売。爆発的な売れ方を受けて第2弾の「天空不動産名刺風アクリルキーホルダー」「武蔵の愛妻弁当ミニマルチクロス」「名言Tシャツ(9種類)」「名言マフラータオル(9種類)」も発売されました。
さらに第3弾の「名言ミラー(7種類)」「武蔵のランチトート」「はるたんの7変化カンバッジセット」「武蔵のスペシャル痛バッグセット」「B2サイズ ポリエステルタオル(全2種)」「ネームバッジ(6種類)」も発表。今月から10月にかけて順次販売していくようです。
また、8月7日に発売された「公式ブック」が、Amazonランキングの1位を記録。8月21日には「はるたん日めくり(カレンダー)」、8月22日には「オリジナル・サウンド・トラック」、10月4日には「シナリオブック」が発売予定。10月5日リリース予定のDVDとブルーレイもテレビ朝日ドラマ史上最高の予約数となったほか、Amazonなどのランキングでも1位をキープしています。
つまり、少なくとも6月上旬の放送終了から4か月後の10月上旬までは、現在のフィーバーが続いていくことが確実視されているのです。
◆ファンの愛情に応える最高のアフターサービス
品ぞろえの豊富さと、ファン心理をくすぐる内容に、他局のあるテレビマンは「放送終了後にあそこまでやるのか」と驚いていました。そもそも連ドラは3か月ごとに作品が入れ替わり、終了後は次の作品に話題が移ってしまうため、「グッズ販売はできるだけ放送中に」というのがセオリー。ネット上で人気が沸騰していたとは言え、「どこまで売れるのか?」、マーケティングとしては未知数だっただけに、その大胆さが際立っています。
ドラマ関連グッズは、「売れたらテレビ局が金銭的に潤う」ことばかり注目されがちですが、それ以上に大きいのは、ファンへのアフターサービスになること。毎週放送される連ドラには、お金を払ってグッズを買うほどの思い入れを持つファンも多く、愛情の深さは視聴率では計れないものがあります。実際、全話平均視聴率4.0%(ビデオリサーチ、関東地区)に終わった『おっさんずラブ』が、そのことを証明しました。
もちろん、すべての作品でグッズを作ればいいというわけではなく、多くの視聴者が思い入れを持つ作品を見極めなければいけません。しかし、視聴率に基づく広告収入が厳しくなりつつあるテレビ業界において、今回のようなグッズ販売が新たな金脈であるのは間違いないでしょう。特に『おっさんずラブ』が放送された深夜帯は広告収入が厳しいため、今回のような「放送後の収入によって、今後の作品への制作費を上積みできる」などの大きな意味があることなのです。
『おっさんずラブ』は、作品そのものも、放送後のグッズ展開も、「思い切った策を実行したテレビ朝日のファインプレー」と言っていいのではないでしょうか。心から楽しみ、仲間と盛り上がる材料を受け取ったファンとの幸せな関係性は、テレビの影響力がまだまだ健在であることを感じさせるものになっています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。