「ロス」を受け続けきたという意味では、鈴愛だけでなく、視聴者も同様。
舞台が岐阜の梟町(ふくろうちょう)から東京に移ると「梟町ロス」、正人が引越ししていなくなると「マアくんロス」、鈴愛が漫画家を辞めて秋風羽織(豊川悦司)のもとを去ると「秋風ロス」、鈴愛が離婚して実家に戻ると「りょうちゃんロス」、祖父の仙吉が亡くなると「仙吉ロス」、律の母・和子が亡くなると「和子ロス」などの声が飛び交いました。
岐阜の梟町、東京のオフィス・ティンカーベル、東京の100円ショップ大納言、岐阜の梟町。そして9月から再び東京と、舞台を変えてキャストを一新するたびに、視聴者は「ロス」を感じてきたのです。
今週の放送でマアくんの再登場が予告されているように、「忘れたころに姿を見せる」のも当作の常とう手段。「ロス」を悲しむ視聴者の感情を揺さぶることで、興味を引きつけているようです。
「ロス」続きでもめげずに立ち直ってきた鈴愛は、最後にどんな「ゲイン」を得られるのか。「ロス」続きでもめげずに見守り続けた視聴者は、最後にどんな「ゲイン」を得られるのか。鈴愛と視聴者の両者が大きな「ゲイン」を得られるハッピーエンドが期待されます。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。