その第一弾は、現在グループのセンターを勤めるヒジンの『Vivid』という曲。舌っ足らずでおキャンな清純少女が、レトロなジャズ・ファンク風の小粋な楽曲に乗せて「退屈な日常を塗り替えてよ」とおねだりするツンデレソングでした。

“先端のカッコいいEDMを取り込んでこそK-POP”という時流を全く無視した、非常に天の邪鬼な選曲ですが、まさにこれこそがLOONAの精神。『Vivid』は、業界の常識やセオリーを片っ端からひっくり返していくLOONA革命のファンファーレとも言うべき一曲でした。

 その後も、次々登場する各メンバーのソロ曲には、フォーク、クリスマスソング、オーケストラバックの壮大なバラード、アイドル歌謡曲、タンゴ……さまざまな音楽ジャンルからのセンスのいい「引用」が仕掛けられており、通な音楽ファンが驚くほどの高いクオリティで仕上げられていました。

 ただ、そんなハイレベルの音楽知識を持たない、従来のGGメインクライアント=韓国内の十代の少女層はこれをガン無視。当然国内セールスは低迷します。

 それでもLOONAは止まらない。世評などどこ吹く風。月ごとのソロ曲リリースをコンスタントに進行させていきます。韓国トップクラスの映像集団Dejipediを起用し、フランス、イギリス、日本、アイスランド、香港、オーストラリアと世界中を飛び回る、浮世離れした──しかし、超ハイクォリティなMVが次々YouTubeにアップされていきました。

 所属事務所の「Blockberry Creative」は韓国有数の軍需産業・日光財閥一族出身の企業家イ・ジョンミョン代表が率いる新興事務所。売出し予算に99億ウォン(約10億円)を計上したとのことで、それ自体がニュースになったほど。とりあえず楽曲が売れようと売れまいと、お構いなしにゴージャスなプロモーションを継続できるわけです。

 イ代表は最近のインタビューで、とかく“金満”ぶりを揶揄されてきたLOONAプロジェクトについてこんなコメントを残しています。

「重要なのは“お金を注ぎ込む贅沢な企画を立てた”のではなく、“良い企画を立ててみると、大きな資金が必要だった”ということなのです。事実巨額の(先行)投資をしましたが、精神的にはハングリーなままでやって来たつもりです」

「今月の少女は、海外市場ですでに肯定的評価を得ています。YouTubeの再生回数を国別に分析すると、アメリカ、韓国、ブラジルの順。現在は全世界的にK-POPへの注目度が高まっていますから、コンテンツさえ良ければガールズグループの未踏の領域にも進出できると思うのです」

 その言葉の通り、毎月のソロ曲リリースが進むに従って、YouTubeを経由して海外のポップ・ロック音楽マニアから支持が高まり、徐々にLOONAプロジェクトは、世界中の音楽ファンを巻き込んだ「事件」へと発展していきます。

“上質な作品づくりこそが、LOONA最大の特徴”と語るイ代表の言葉を踏まえると、彼女たちに多数の楽曲を提供してきた、ある裏方集団の存在がクローズアップされてきます。

◆ベースは日本の渋谷系?? 古今東西ポップ音楽の影響を受けた音楽玉手箱

 先進的な音楽性で知られるK-POPですが、あくまでそれはテクノミュージックやダンスソングとしての先鋭性を指します。西欧はもちろん、日本、ユーロとポップミュージックの過去遺産から美味しいところを抜き出し、現代のリズムや音色の中に隠し味に仕込んでいくレトロポップ・リノベーションの手法は、あまり一般的ではありません。

 こうした「過去の音楽財産からの引用」を駆使する、“知的”かつ“批評的な”スタイルは、むしろ日本のポップ職人のお家芸でした。

 LOONAのソロ楽曲を聴き込んでいくにつれ、1990年代に「渋谷系」と呼ばれた一連のJ-POPミュージシャンの顔が頭に浮かんできます。ピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギター、ORIGINAL LOVEらの音楽は、1960~1970年代の英米のポップやソウルから汲み出したエッセンスを巧妙に自分たちの音楽に流し込んでいたものです。

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