1981年以降、がんは日本人の死因ナンバーワンを独走する。年間の死者数も37万人(2016年)と増加傾向にあり、がんの予防は喫緊の課題となっている。
しかしその中核となるがん予防薬の開発はなかなか進まず、実用化までの道は遠かった。その薬が、ついに登場間近だというのだ。日本在宅薬学会理事長の狭間研至医師がいう。
「肝臓がんの再発率を75%も下げる予防薬『ペレチノイン』を医薬品メーカーの興和が開発し、治験の最終段階に入っています。あくまで今回は再発したがんに対する予防薬ですが、実用化されれば画期的といえる」
2011年に開発が始まり、発売時期は未定だが現在治験は最終段階で、国内とアジアにおいてチェックが行なわれているという。
肝臓がんは、肝臓組織に発生した「がん幹細胞」が増殖することで発症するといわれている。ペレチノインは、がん幹細胞に働きかけ増殖を抑制することが明らかになった。
「今回の治験の対象はあくまで『再発の肝がん』ですが、再発でも初発でも発生メカニズムは同じなので“肝がん予防薬”として使える可能性はあると思います。たとえば肝硬変が進んだ人が、がんに移行しないようにする予防的な投与などの用途が期待されます。
とはいえ“予防薬”として保険適用を得るまでには、治験を一からやりなおさねばならないなど、さらなる時間が必要でしょう」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)