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『透明なゆりかご』原作漫画家が「終末期病棟」を描く理由

漫画家の沖田×華氏

 この7月からNHK総合で連続テレビドラマ化されて、大きな反響を呼んでいる『透明なゆりかご』(毎週金曜日よる10時放送、9月21日最終回放送予定)。原作コミックスは累計360万部(電子含む)を突破し、第42回講談社漫画賞(少女部門)も受賞した話題作であり、同作を執筆したのが、漫画家・沖田×華氏だ。自身の発達障害を題材としたコミックエッセイも好評を得ている沖田氏だが、シリアスなストーリーを産婦人科を舞台に展開する『透明なゆりかご』に続いて、挑戦したのが終末期病棟(ターミナル)の日常を描く『お別れホスピタル』。最新作でなぜこのテーマに挑戦したのか、その理由を沖田氏に聞いた。

 * * *
──ドラマ『透明なゆりかご』の最終回放送が間近となりましたが、原作者としてドラマをご覧になって、どのような感想をお持ちですか?

沖田:私の作品なんですが、自分のものじゃない(笑)。なんだか夢を見ているような不思議な経験をさせてもらっている感じで、とても新鮮です。

 この作品が、私が産婦人科医院でバイトをしていた1997年当時を描いているのですが、ドラマではその昭和っぽい部分も丁寧に再現してくれていて、自分のアルバムをテレビを通してみんなで見ているような……そんななんとも言えない気持ちになります。このようにドラマ化してくれた脚本家の安達奈緒子さん、監督やスタッフの方々、そして主演の清原果耶さんを始めとする役者の方々には、すごく感謝しています。

──ドラマ化された『透明なゆりかご』に続いて、「週刊スピリッツ」にて月一シリーズ連載をスタートさせたのが、『お別れホスピタル』になります。『透明なゆりかご』では“産まれてくる瞬間”、今度は“死に行く瞬間”をテーマとしたのは、なぜなのでしょうか。

沖田:私自身は終末期病棟(ターミナル)で働いた経験はありませんが、知り合いの看護師やいろんな方から、そういう病棟での話を聞いていて、以前から描いてみたいという思いがありました。余命わずかにも関わらず、死んでいくとは思えない患者さんの個性の強いエピソードをいくつも聞いていたので。

「その人が人生の最期をどうしてこの病院で迎えることになったのか?」を描くことで、その人の“人生のドラマ”を深いところで描けるのではないかと思いました。これは看護師の経験がある漫画家である私にしか描けないのではないかと思って、この題材に取り組むことに決めたんです。

──作中の病院に対して、「ゴミ捨て場と呼ばれる病院」という表現が衝撃的ですが、これは沖田さんのオリジナルなんでしょうか。

沖田:いえ、「ゴミ捨て場」という言葉は、私が考えたわけではなく、実際にナースの知り合いから聞いた言葉です。強い印象が残っていたので、今回、作中で使いました。

──単行本第1集では、患者さんの6つの話が登場しますが、エピソードがどれもリアルで胸を打たれます。取材などされたんでしょうか。それとも創作ですか。

沖田:さまざまなエピソードは、自分が看護師時代に関わった患者さんや、いろんな人から聞かせてもらった話を元にして、それを作中で取りあげる一人の患者さんに落とし込んで、構成しています。もちろん、私が想像して描いている部分もたくさんあります。

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