◆マスク氏の破天荒ぶり
ところで、前澤氏が月旅行契約に支払った金額は明らかにされていないが、1憶ドル(約112億円)とも噂されている。
スペース X はこれまでマスク氏が私財を投げ打ってファルコンロケットの開発を行い、打ち上げに応じてNASAなどから資金提供を得てきた。
マスク氏の経歴も簡単に振り返ってみたい。1995年にスタンフォード大学院を2日で辞め、インターネット会社Zip2を創業。その後、ペイパルの母体となる会社を興し、eBayに売却して約1億7000万ドル(約170憶円)を手にした。
彼は学生時代から「人類の将来にとって最も影響を与えるものは何か」を考え、たどり着いた結論が「インターネット、持続可能なエネルギー、宇宙開発」だった。悪化する環境の地球に75億人も住めない。ならば火星に移住すべきだと考えたマスク氏は、eBayの売却で手にした資金でスペースXを創業。次に電気自動車メーカー「テスラ」、さらに、太陽光発電企業「ソーラーシティー」と起業していく。
スペースX創業前には、ロシアから中古の大陸間弾道弾(ICBM)を買い付けようとする破天荒ぶりも見せつけた。
現在、マスク氏の個人資産は約200億ドル(約2兆2400億円)。ただ、今回のBFRの開発には約50憶ドル(約5600憶円)が必要だと語っていて、前澤氏の契約金はその資金調達の一環でもあることは間違いない。
◆トランプ大統領の気まぐれ
BFRはもともと人類を火星に移住させるためのロケットとしてスペースXの開発を進めてきた。しかし、トランプ大統領の登場がスペースXの計画に変更をもたらした。
2017年2月、米国大統領に就任したてのトランプ氏は NASA に対して2021年以降に予定されている有人月旅行計画を前倒しして、自身の任期中(1期:2017年~2021年)に間に合わせることができないかと無茶なことを言い出した。自分の業績として、月への有人飛行を欲しがったわけだ。
だが、NASAは数か月の検討の結果、コスト的に無理ですとトランプ大統領の要請をはねのけた。この様子をみていたマスク氏が、NASAができないなら、スペースXが月への有人飛行をやってやろうと乗り出したという経緯があったのだ。