スポーツ

バド桃田賢斗 13か月の謹慎期間を経て身につけたスキル

北海道地震被災者支援チャリティも桃田の発案だった

 人間は誰でも失敗をするもの。失敗のあと、どのような振る舞いをできるかが、その人の底力が現れるところだろう。金髪と奔放な発言で知られていたバドミントンの桃田賢斗は、みずからが冒した過ちでリオデジャネイロ五輪出場を逃した。昨年、復帰してからの桃田は、世界選手権で優勝するなど快進撃を続けている。人生を変えた失敗を乗り越え、桃田はどんな選手になったのか。スポーツライターの小野哲史氏が、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2018で初優勝を勝ち取った桃田の進化と成長をレポートする。

 * * *
 9月11日から16日まで行われたバドミントンの「ダイハツ・ヨネックス・ジャパンオープン2018」で、桃田賢斗(NTT東日本)が日本勢初となる男子シングルスを制した。

 今大会の舞台は、2020年東京オリンピックで使用される調布市の武蔵野の森総合スポーツプラザ。会場の雰囲気や、多くの選手が「飛ばない」と口にしたシャトルの感覚を肌で実感できた上、通算37回目を迎えた伝統あるジャパンオープンで初優勝という結果を残し、桃田は「自分にとって縁起のいい体育館になった」と胸を張った。

 ただ、それ以上に価値があるのは、桃田が世界トップレベルの一選手から、まさに「世界ナンバー1プレイヤー」という無二の存在へと変貌しつつある姿を、日本のファンの前で披露したことだろう。

 準々決勝では、北京とロンドンでオリンピック2連覇を果たし、「レジェンド」と称される35歳のベテラン・林丹(リン・ダン/中国)を圧倒。準決勝では昨年の世界選手権覇者で、ジャパンオープン連覇を狙った世界ランキング1位のビクター・アクセルセン(デンマーク)をストレートで下している。決勝でも、今年の全英選手権を制した石宇奇(シー・ユーチー)やリオオリンピック金メダルの諶龍(チェン・ロン)といった強力な中国勢を撃破して勝ち上がってきたコシット・フェトラダブ(タイ)に対し、完勝と言える内容で格の違いを見せつけた。

 ジュニア時代から将来を嘱望されてきた桃田は、21歳だった2016年4月に世界ランキング2位に上り詰めた。しかし、その直後に違法カジノ店で賭博行為をしていたことが発覚。無期限の試合出場停止処分を受け、バドミントンで日本男子初のメダル獲得が期待されていたリオオリンピックには出場することさえ叶わなかった。

 それでも13ヶ月間の謹慎期間を経て、昨年5月に処分が解除されると、自費での遠征を含め、国際大会で5大会連続優勝。今年1月に日本A代表に復帰してからは、4月のアジア選手権や8月の世界選手権で初優勝を飾るなど、快進撃を続けている。復帰後、国際試合での勝率は9割を超え、282位からのリスタートとなった世界ランキングは、わずか1年3ヶ月ほどの間に一挙に4位にまで戻した。

 桃田は代名詞とも言えるネット際に落とすヘアピンショットをはじめ、テクニックの高さにはもともと定評があった。そこに謹慎中、毎日2時間以上取り組んだという苦手のランニングや筋力トレーニングにより、スタミナやフットワークが格段に進化した。桃田は自身の成長を次のように感じている。

「(今大会は)試合を通じて、守備から相手を崩すという自分のディフェンス主体の戦い方が研究されていることを感じましたし、自分がアタックするまで打ってこない選手もたくさんいました。でも、そういった長いラリーになったときに、ライン際にしっかり体を入れて、スマッシュを打てるようになったのは成長した部分だと思います」

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン