「日本乳癌学会の認定施設や、『乳腺認定医』『乳腺専門医』のいる病院は、治療技術が高い傾向にあります。特に乳腺専門医は『学会の認定施設で100例以上の診療経験を有する』など、専門性の高い訓練を受けないと取得できず、資格が更新制なので、最新治療を学び続けないと維持できません。さらに、乳腺認定医を教育する立場の『乳腺指導医』がいる病院はさらに数が少なく、より乳がん治療の経験と知識が豊富といえるでしょう」
日本乳癌学会の認定施設としては、北海道がんセンター、東北労災病院(宮城)、聖路加国際病院(東京)、山梨大学医学部附属病院、広島大学病院、徳島大学病院、熊本大学医学部附属病院などがある。学会のホームページを見ればこのほかの認定施設や専門医がチェックできる。
病院の組織体制や治療設備なども5年生存率を上げる要因となるが、直接患者に治療を施すのは「人」であり、医師の個人の力量も重要である。増田さんが続ける。
「私の30年の取材経験では、まず聖路加国際病院の山内英子医師。2005年に乳腺外科や乳腺腫瘍内科が揃った乳がん専門の医療チーム『ブレストセンター』が作られ、山内医師はそのセンター長を務める名医です。
地方なら、愛知県がんセンター中央病院の岩田広治医師は最新の薬物治療の知識も深い医師です。熊本大学医学部附属病院の岩瀬弘敬医師も日本乳癌学会の学術総会会長を務め、乳がん治療に優れた医師です」
医療、特にがん治療の世界は日進月歩で、最新医療をキャッチアップしているかどうかも病院選びの基準になる。
「乳がんなら、今注目されているのが遺伝性乳がんへの治療です。遺伝性乳がんを発症しやすいハイリスクの人への個別化医療が進んでいます。ただ、がん拠点病院でもまだ普及の途上です」(増田さん)
ランキングでは、新潟県立がんセンター新潟病院や四国がんセンターなどが該当する。
◆その手術は“芸術” トップ医師のいる場所
次に、女性の罹患率第2位の「大腸がん」。大腸がんは食生活の欧米化によって近年急増。死亡率では1位だ。
しかし、早期の発見や適切な治療で根治が充分に目指せる病気でもある。内視鏡による検査や手術の技術が上がった現在は、小さい腫瘍だと検査の際にそのまま切除が可能な場合もある。問題は、がん細胞が広がって内視鏡では切除できなくなっているステージII以降だ。
最近では、開腹手術に加え、腹腔鏡による切除手術が主流になってきた。開腹手術より傷口が小さく体への負担が軽いので、回復も早い。ただし、腹腔鏡手術は難しく、医師の技術が問われる。医療ジャーナリストの松井宏夫さんはこう語る。