そもそも避難所といっても、そのほとんどは体育館のような硬い床での雑魚寝。プライバシーもなにもあったものではありません。できれば避難所で生活したくないと考えてもおかしくありません。
実際に先の熊本での震災では車中泊の避難者があまりにも多く、国会で車中泊に対する質疑が交わされたほどです。報道で指摘すべきは「車中泊のつらさ」ではなく、「プライバシーも守れない避難所の在り方」ではないでしょうか。
ちなみにその国会では、
〈災害時に自動車内に避難した者のようにやむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者(車中避難者)に対しても、必要な措置を講ずるよう努めるべき〉
との国の考えが示されています。つまり車中泊の避難者も支援するというのが行政のスタンスです。
ですから、避難所での生活がどうしても無理であれば、堂々と車中泊をしましょう。そのときは、エコノミー症候群にならないように、しっかりと環境を整える。車中泊をするなら上手に──ここが重要です。ノウハウは山ほどありますから、やればやるほど快適になります。
まず、車中泊の基本は、クルマから。2人乗りのオープンカーのように、どうしても車中泊に向いていない車種もあります。また、軽自動車に4人で寝るというのも無理があります。できれば、軽自動車なら2人まで。3人以上で寝たいなら、ミニバン・クラスが理想です。
次に装備です。最も用心したいのはエコノミー症候群。座ったまま寝るのがいけません。シートを倒して、足を伸ばせるようにしてください。そのときに、あると嬉しいのがマット。シートの凹凸をフラットなものにして、寝心地を大幅にアップしてくれます。
また、プライバシーを確保するためにはカーテンもマスト。暑い時期なら、窓用の網戸や電池で駆動する扇風機なども用意しておきたいものです。
実際の災害時には、そうしたアイテムを買いに行ったり、宅配してもらうのが難しくなることもあります。できれば、事前から用意しておくと良いでしょう。
また、慣れるために、レジャーとしてオートキャンプなどを体験しておくのもおすすめです。実際に体験することで、必要なものも見えてきます。「つらく厳しい車中泊」もアイデアや工夫によって、「楽しく快適な車中泊」にすることも可能です。
被災の苦しさを、少しでも軽減できるように車中泊を上手に利用してほしいものです。