ビジネス

橘玲×中川淳一郎 ウェブへの希望が幻滅へと変わるまで

ウェブに希望を持った人たちがどんどん幻滅していった10年を振り返る

「Web2.0」という言葉に象徴されたように、インターネットが普及し始めた当初、多くの人はウェブに対して大きな希望と期待を抱いていた。だが、普及とともにウェブは決して万能のツールではないことに気づいていく──。その過程に何があったのか。『言ってはいけない』(新潮新書)、『朝日ぎらい』(朝日新書)などの著書がある作家・橘玲氏と、『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)などの著書があるネットニュース編集者の中川淳一郎氏が語り合った。(短期集中連載・第3回)

 * * *
橘:中川さんは、ずっとインターネット上の人々の行動をウォッチし続けていると思うのですが、最初にインターネットの仕事をされたのはいつ頃ですか?

中川:1994年の大学2年生の時に電子メールは始めていたのですが、仕事としては1997年に、博報堂に入ってからです。その年、ソニーがクライアントで、仮想空間を作ろうというプロジェクトを立ち上がって、そこのお手伝いをしたのが最初なんです。

橘:その時はネットに対する希望というか、期待があったわけですよね?

中川:すごくありました。海外に友人が住んでいたんですけど、一瞬でつながる、しかもタダで、という具合です。その頃は国際電話をするにも1分500円くらいするのに、タダでコミュニケーションできてしまうわけですよね。当時、コンピュータ系の雑誌や本を熱心に読み、ネットに詳しかった上司が仮想空間の企画を考えていたんですけど、これって今思えばすごい話でした。自分の代わりのアバターというのがいて、こいつが別の所にいる人と仮想空間上で会えて、いろいろ面白い開発ができるんだと力説するんですよ。

 1997年段階で、アメーバピグとかセカンドライフ、そして昨今隆盛のソーシャルゲームみたいなことをその人はすでに考えていたんです。なんでこんなことを彼が考えたかというと、ソニーが大企業病に陥っていて、出井伸之氏が提唱した「デジタル・ドリーム・キッズ」というワクワクするような概念が社内から消え、ソニーが悩んでいると言われていた頃でした。

 じゃあそれをどう打ち破るかということで、インターネットを使った新しいものをやればいいと私の上司は考えました。どういうプロジェクト名にするかとなって、“びびんちょプロジェクト”はどうかと言ったんですよ。子供っぽいじゃないですか、平仮名で“びびんちょ”って。それでネットを使える人が自由に発言してソニーの社員もそこに入って、イノベーションを起こせばいいと彼は力説しました。だから私自身のネットでの仕事の開始は1997年です。今、この上司は博報堂の役員になっています。先見の明がある方でした。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン