確かに、採用担当者にしてみれば、まずは人が集まれば良い、という思考に陥りやすいことは理解できなくもない。分母が多ければ多いほど、優秀な人材を獲得できる可能性は高まるのである。しかし、こうした採用に関する”インフルエンサー業務”を行ったことがある学生側は、単なる仕事、もしくは小遣い稼ぎとしてしか考えていないらしい。

「サークル内向けのSNSや、個人SNSへフォロワー限定ポストで“××会社は期待できる”とか“採用試験受けるつもり”と書いたことがあります。すでに某メディアに就職が決まっていましたが、広告会社に勤めるサークルの先輩からお願いされたので、仕方なくって感じですね。報酬は五~六回、××会社のことをつぶやいたりして、3万くらい。あとは打ち合わせの時に焼き肉に連れてってもらった(笑)」

 このように打ち明けたのは、現役の大学4年生で、大手運輸系企業に来春から勤務する予定のU君だ。難関国立大に在籍するU君は、今年春にはすでに内定をゲットしていたが、そのことを公表せずに、自身が「就職活動中」である体で、このような依頼を受けたというのだ。顔立ち端正なU君は、かつて雑誌の読者モデルとしても活躍していた。インスタグラムでは数千人のフォロワーを持ち、投稿には毎回数百の「いいね」が付き、十数件のコメントが寄せられる。フォロワーにはU君と同世代の学生がたくさんいるから、U君の一挙手一投足が彼らに与える影響は小さくない。まさに「インフルエンサー」なのだ。

 国内大手の保険会社に勤めるTさんも、昨年同じような「業務」を経験した一人だが、U君同様に「あくまでも仕事だった」と明かす。

「私の場合は今の会社から内定をもらった後も、三社くらいの会社説明会に出かけました。アパレル系、音楽系、あとはなんだったかな…。忘れちゃいましたが、合計で10万くらいは貰ったと思いますね。今の会社の人事担当者にバレて大変でしたが、代理店に勤める先輩から頼まれてと弁解して、何とか事なきを得ました(笑)。社会人になって冷静になって考えると、そうまでしないと人が集まらない企業ってどうなのかな?とも感じます。はっきり言ってダマしじゃないですか。

 私が宣伝した会社名をネットで調べると“ブラック”とか“激務”みたいなキーワードが出てくる。そんな会社に人が集まるわけがない。あと、今だから言えるけど、私なんかの宣伝に影響されてくる学生って、結構情報に疎いというか、微妙な感じじゃないのかなって思ったりしますよ、正直」(Tさん)

 TさんもSNS上では少なからず影響力を持っていた一人だが、就職を機にSNSへの投稿が減り、今では立派なビジネスマンとして、毎日激務に励む。「単なるバイトでしたよ」として、わずか一年前の事ながら、記憶も薄れているほどなのだ。

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン