国内

右も左も都合のよい天皇の発言は利用、気に入らぬ発言は無視

現代史家の秦郁彦氏

 皇太子時代に“君臨すれども統治せず”という在り方に接した昭和天皇は、明治憲法下で立憲君主であろうとした。だが、二・二六事件で反乱軍の鎮圧を命じたり、終戦の聖断を下さしたりと例外的な事例もあった。新憲法下でも、マッカーサーとのトップ会談に計11回も臨んだ。では、日本が独立を回復してからはどうか。現代史家の秦郁彦氏が解説する。

 * * *
 サンフランシスコ講和条約の発効によって占領期が終わり、日本が独立を回復すると、昭和天皇は本来の「象徴」の座に復帰した。その後、国家の政策に影響を与える発言はしていない。

 しかし過去の発言はさまざまな形で世に出て、物議を招くこともないではなかった。たとえば戦前・戦中の出来事に関して昭和21年に側近へ語った談話をまとめた『昭和天皇独白録』で人々を驚かせたのは、昭和天皇の人物評の厳しさだ。天皇は臣下の悪口など言わないと思われていたが、たとえば近衛内閣の外相だった松岡洋右については、「おそらくはヒトラーに買収でもされたのではないかと思われる」などと語っていた。

 2006年に報道されたいわゆる「富田メモ」も記憶に新しい。元宮内庁長官・富田朝彦のメモの中に、昭和天皇がA級戦犯の靖国神社への合祀に不快感を示す発言があったのだ。

 1978年にA級戦犯を合祀した靖国神社の宮司・松平永芳は、終戦直後に最後の宮内大臣として昭和天皇に仕えた松平慶民の子である。その永芳がA級戦犯の合祀を打診した際、宮内庁の侍従次長は「そんなことをしたら陛下は靖国に参拝されなくなりますよ」と警告した。だが東京裁判に強い不満を持つ永芳は「天皇にお参りしてもらう必要はない」と合祀を強行する。「富田メモ」では、これに対して昭和天皇が次のように語っていた。

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン