自分を見て思う、今のアラサーってそもそも残念な世代だと。幼少期にバブルの残り香を嗅いだはいいものの、年齢を重ねるごとに国は辛気臭くなるばかり。アナログでもなければデジタルネイティブでもない微妙なお年頃。
コラムニストも芸人も“おもしろ”を提供する意味では同じだ。そして、僕は気づいている。逆立ちしても人気YouTuberのフィッシャーズに“おもしろ”で勝てないってことを。アラサーにして、若者に白旗をブンブン振っている。
地上波への憧れを捨てきれないアラサー世代の芸人は、テレビの予行練習としてYouTubeでトーク番組を配信することが多い。彼らは自らを決してYouTuberとは名乗らない。数多くあるアラサー芸人のトーク番組、そのなかで個人的に最もハマったのが「タイタン」所属の芸人、ウエストランド(河本太34歳、井口浩之35歳)による『ぶちラジ!』だ。毎週木曜日夜8時に更新される30分のラジオ形式の番組。手弁当にも関わらず、今年で7周年を迎えた長寿番組でもある。
この番組の特徴は愚痴。
『笑っていいとも!』の週替わりレギュラーに大抜擢されたが1年後にまさかの番組終了、2017年M-1の準々決勝で喝采を浴びたにも関わらず落選、家賃が払えず退去寸前など。
日々、生きるなかで起こる2人にとって不都合な事実、それを嘆き続ける。年齢は重ねたものの収入、うだつ共に上がらないアラサー世代のため息を代弁するかのように。
そこに僕は共感し、毎度頷きながら拝聴している。
また、平日には本編で言えなかった愚痴を漏らすスピンオフ番組『ウエストランド・井口のぐちラジ!』も配信。井口が先週あった愚痴を5分間に渡り語り続ける。ちなみに、放送回数は1160回を超えている。
芸人同士の揉め事といった内輪的な内容も多いが、時折「最近の映画って舞台が出版社ばっかじゃん!」といった意外な角度からの批評も飛び出すから見逃せない。大根仁監督の一連の作品群、また欅坂46平手友梨奈の主演で話題となった『響』など。出版文化は斜陽なのにも関わらず、出版社を描いた作品は確かに多い。
チリも積もれば山となる、愚痴も積もれば凄みがでてくる。最低、週に6回の愚痴を吐くウエストランド。愚痴という分野に関しては、日本有数の見識者だ。
ウエストランドは自らを「若手芸人」と自称する。しかし、トークによっては「おじさん」とも語る。知人の芸人に「若手芸人はいくつになったら芸人になるのか?」と聞いてみれば「売れたら!」と教えられる。若手芸人と年齢は関係ないみたいだ。
ウエストランドを筆頭にアラサーの”若手”芸人たちから “若手”が消え、“売れっ子”へと変わる日を待ち望んでいる。これも同世代としてのシンパシー、今後も勝手な応援を続けたい。