ライフ

口から食べて心身活性化 口腔ケアから姿勢まで食にこだわりを

医療と平行して“食べる“ことで病気回復も早まる(写真/アフロ)

 高齢になると、大切な“食べる機能”はどんどん衰えるのだろうか。NPO法人「口から食べる幸せを守る会」理事・小山珠美さんはこういう。

「加齢により、皆一様に衰えるということではありません。ただ、どうしても若いときに比べて筋肉は減り、内臓の働きも弱くなって食べる量も減り、栄養状態も悪くなりがち。関節などの動きも悪くなって動きにくくなりますね。食べる機能も多くの筋肉に支えられていますから、自ずと噛んだりのみ込んだりする力が弱くなることは確か。歯周病や虫歯で歯を失うこともあります」

 よく問題になる“誤嚥”は、のどから食道へ続く経路と、空気が気管から肺へ流れ込む経路をコントロールする弁がうまく作動せずに、食べ物が気管の方へ行ってしまうこと。場合によっては命にもかかわる誤嚥性肺炎の原因にもなる。

 そばやラーメンなど、麺をすすり上げて食べる料理は、空気と食べ物、水分が一気に取り込まれるため、誤嚥しやすい。食べる機能が衰えた高齢者には少々高リスクなのだ。

「また病気が原因で食べる機能がままならなくなることもあります。噛む、のみ込むは脳からの指令による繊細な筋肉の動きに支えられていますから、脳梗塞や認知症など脳の機能に支障があると、体の器官が万全でも口が開かない、噛めない、のみ込めないなどが起こることがあります」

 ここで小山さんは、多くの人が勘違いしている認識を改めてほしいと強く訴える。

「加齢や病気で口から食べることが困難になってきたとき、今までは誤嚥性肺炎のリスクが高まるため胃ろうや点滴がすすめられてきました。上部消化管を使わずにすむように、胃に通した管や血管から、栄養を投与する方法です。もちろん、体に必要な栄養や水分は確保されますし、それが効果的な場合もあります。

 でも口から食べなくなれば、口や腕・手指の筋肉、それらを動かす脳も使わない、唾液も出ない。乾燥した口腔内では雑菌が増え、感染症のリスクもアップ。満足感がないので次への意欲もわきません。口から食べることで得られる重要な効果が、すべてなくなってしまうわけです。

 体は1週間使わなければ、10~15%筋力が低下するといわれますが、高齢者などは急速に衰弱してしまいます。こういったリスクが明らかになり、“口から食べる”重要性が認識されるようになってきたのです」

 実際に小山さんの携わる病院でも、治療と並行して口から食べるリハビリを積極的に行ったことで、治療効果が高まり、回復が早まる事例が増えているという。

「病気を治すというのは、手術や薬だけの力ではないのです。回復するためには、体全体の総合的な力が必要。好きな食べ物を見て高揚し、噛んで味わってのみ込む一連の機能は、生きる上で欠かせない働きであることを知ってほしい。そしてもし親御さんが入院されたら、ぜひご家族から医療者に、食べるリハビリを積極的にお願いしてください」

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン