もともと松本清張の『黒革の手帖』(テレビ朝日系)の悪女で主演女優として人気を獲得した米倉だが、今や「出てくるだけで権威を蹴散らす女」として期待をされる。相手が年上だろうと偉かろうと関係なし。待ってました、よくぞ言ってくれた、と視聴者がスッキリするような言葉を言ってくれる存在。
絶滅危惧種の「二枚目スター」や「喜劇役者」などと同じように「蹴散らし俳優」としてのブランドイメージを確立し、世間の期待に応え続けているといっていい。
さらに『リーガルV』を見て、もうひとつ気づいたことがある。この翔子は、とにかく自分が思ったことを口にする。大好きなSLに乗れば「やっぱりSLは格別だわ」「窓の外には蒸気の香り!!」と独り言、断ろうと思っていた依頼の報酬が高額だと気づけば「泣き寝入りをしちゃいけないの!」と前言撤回、青木がドジをすれば「これからはクズと呼ぶ」といった具合である。
セリフが多いことで知られるドラマといえば、橋田壽賀子脚本の『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)である。「お前の世話にはなりたくない」「お金が目当てなんでしょ」など、思ってもなかなか口にできないこともバンバン言い合う、この名シリーズを支える女優といえば、もちろん泉ピン子。泉ピン子もまた、「若い者の小理屈など蹴飛ばすパワーを見せる存在」として期待される稀有なブランド確立俳優だ。
『ドクターX』シリーズでは、泉ピン子×米倉涼子の共演もあった。米倉の行く先に微笑むのは、ピン子。『リーガルV』のしゃべくり翔子は、その可能性を十分に感じさせている。