〈自分でなんとか頑張るしかないんだよ、自分の人生だもん。だれのためでもない、自分のために頑張るんだよ。だから、一線で頑張ってる人っていうのは、どこか一匹狼みたいな精神があるんだと思う。自分しかないんだ…ってね〉(『TOSHI―LAST HERO』1986年9月発行)

 主演ドラマ『教師びんびん物語II』(フジテレビ系)が高視聴率を叩き出し、主題歌『ごめんよ涙』がオリコンや『ザ・ベストテン』で1位に輝いた1989年、デビューからの10年をこう振り返っている。

〈この10年の間、それは壁にブチあたったこともあったよ。でも芸能界をやめようと思うほど重症なもんじゃない。精神的な葛藤はあったけど、それから逃げ出すのはズルイと思う。たたかれても、たたかれても、いつも、いまにみてろよという気持ちになった。自らプレッシャーかけて、そのプレッシャーに打ち勝って頑張ってゆくタイプなんだ。そんな自分、結構スキだよ(笑)〉(『TVガイド』1989年5月19日号)

『教師びんびん物語II』のスタート前には、視聴率30%を目標として公言。実際、最終回で31.0%を記録。フジ『月9』初の快挙であり、見事な有言実行だった。

 盤石な地位を築いたように見えても、田原はまだこう話していた。

〈いつもトップだったわけじゃないけど、平均点のところにはいられた。『一発屋』じゃイヤだから、それなりに汗かいたし。『自分がいつ消えてなくなるか』と、今でも思う。この世界は(将来の)約束がない、ギャンブルみたいなところあるから〉(朝日新聞1990年6月29日付夕刊)

 テレビからいきなり飛び出したように見える田原俊彦というアイドルは、常に売れ続けなければならないという宿命を背負っていたのか。

◆努力を続けても盛者必衰は避けられない

 だが、いつまでもデビュー直後のような人気を永遠に保てるアイドルは存在しない。言い換えれば、人気の下落はアイドルという定義から外れることになる。

 パッと出てきて、パッと散る――。

 それが、アイドルという言葉に含意されている偏見ではないか。その風潮に抗い続けたのが、田原俊彦だったのである。

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