中川:彼らの場合は、愛国もクソもないと思うんですよ。基本的に、韓国と中国が嫌いというだけなんです。そこが原動力なので、「ネット右翼」という言葉自体がそもそも違うと思っていて、ネトウヨというよりも「嫌韓派」とか「韓国フォビア」とか、そういった言葉の方がしっくりくるかなと思っています。彼らは日本の上空のかなり広い部分を支配している米軍が定めた「横田空域」を批判しない。こっちの方がよっぽど日本にとっては主権が脅かされている話だっていうのに……。沖縄の米軍についても、「中国が侵略してくるから必要だ」という理屈から、基地反対派を売国奴扱いする。ちょっとちょっと、お前ら元々「在日特権を許すな!」と主張していたけど、もっとも在日特権持ってるのって米軍でしょうよ。

橘:私の理解だと、ネトウヨは右翼ではなく“日本人アイデンティティ主義者”ということになります。彼らは「自分が日本人であるということ以外に誇るもののないひとたち」で、「反日」「売国」を攻撃することでしか自分たちのアイデンティティ(社会的な自己)を確認できない。在日米軍は反日でも売国でもないから、日本の上空を好き勝手に飛行していてもどうでもいいんでしょう。

中川:右翼は途中で飽きちゃうんじゃないですか、運動自体に。ネトウヨの場合だと、彼女ができたからやめるみたいな、感じもあるようです。

橘:トランプを支持する“白人アイデンティティ主義者”も同じですが、彼らを突き動かすのがロジックではなく心情だからじゃないですか。だからちょっとしたきっかけで、別の世界に移っていったりする。それに対して左の方がもっと原理主義的で、「自分たちだけがロジカルな正義を独占している」と主張する。

中川:多分ネトウヨの方が若干後ろめたさを持っているから、早くやめることができると思います。どう考えても「朝鮮人は死ね」みたいな主張が正しいわけがない。だから最近「元ネトウヨでした」とツイッターで表明する人がポツポツと出てきているのかもしれません。左翼の場合はとにかく正義の側としての大義名分があるし、社会を良くしているという認識があるからやめられない、という違いかもしれません。趣味であるかガチであるか、という違いだと思うんですよね。ガチといっても、いつしか趣味=糾弾、みたいになって何にでも難癖付け出す人も出てくるのが困ったところです。

橘:「冷笑系」と言われるのは、デモなんかしても社会は変わらないし、正義を振りかざすともっとヒドいことなると考えているからだと思います。私のいちばんの関心は自分が幸福になることで、仮によりよい社会が実現したとしても、その代償として自分が不幸のどん底に突き落とされるならなんの意味もない。こういうことをいうと「エゴイスト」と批判されるわけですが、ナチスは「よりよい社会をつくる代償としてユダヤ人を絶滅すべきだ」と主張しました。

 2017年に『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)という本を出して、専業主婦の方から「自分たちをバカにしている」と叩かれたんですが、たしかに、子どもを産んだ女性が会社を辞めて専業主婦にならざるを得ない実態が日本社会にあることは間違いありません。こうした性差別をなくし、すべての女性が男性と対等にいきいきと働ける社会に変えていかなくてはならない、というのもそのとおりだと思います。でも、そうやって「よりよい社会」の実現を待っていたら何十年もたってしまう。いま20歳の女性に、「50歳や60歳になれば男女平等の理想社会がやってきます」といっても、まったく説得力がないでしょう。だとしたら、いまの日本が女性が差別される残念な社会であることを前提としたうえで、そのなかで自分と家族がいかにして幸福になるかを考えるほかはない。それが私の基本的な発想です。

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン