中川:それって社会の状況に合わせて、自分が変わっていく方が良いということですか?
橘:ゲームのルールに合わせて攻略法を最適化していく、という感じですね。ネットで、「橘玲ってようするに“ハッカー”でしょ」という評を見かけて「なるほど」と思ったんですが、私がこれまで書いてきたものは、金融市場とか日本の税法とか、自分たちが生きている世界のいろんなバグを見つけて、「それを上手に利用すればかんぜんに合法的にこんな面白いことができるよ」という情報提供です。ハッカーの論理では、プログラムは完璧なテキストに従ってつくるのではなく、バグを見つけて面白がる連中がいるから試行錯誤で修正されていくわけじゃないですか。それと同じで、社会をよりよいものにしていくのはデモではなく、みんながバグを見つけて「悪用」することなのかもしれない。為政者はそれに対応しなければなりませんから、その結果、これまでよりずっと公正で効率的な社会に変わっていくのです。
◆安倍首相が辞めたら攻撃対象がなくなって“安倍ロス”が起こる?
中川:私も与件主義というか、与えられたもので最適なものは何かを考えます。デモが通用しないということは、これだけ反政権デモをこの5年間やり続けてきても政権はビクともしないことから明らかになっているのではないでしょうか。在特会系のデモにしても、「日韓断交」を何度も訴えているのに、そんなことになる気配すらない。この手法が共感されないということは何回も証明されているのだから、それだったら他の手法を考えようぜと。安倍政権を倒したいんだったら、自民党の中で石破茂氏とか有力な議員を左翼が担ぎあげるくらいのことをやるとか、そっちとかの方がいいんじゃないかとか思っちゃうんですよね。野党のやり方っていうのは、安倍はこんなに極悪だと言い続けて、それが5年以上続いていると思うんですよね。ところが……。
橘:やっぱり、発言すること自体が快感になっているんじゃないですか。
中川:たとえば小池晃氏、福島瑞穂氏、菅直人氏、福山哲郎氏あたりって、デモに行けばよくいる面々じゃないですか。それって効果ないのに何であの人たちはやり続けるんだろう、とつくづく不思議でなりません。別のことを考えろと思っちゃうんですよね。これまでにやってきたデモって、「共謀罪許すな」「戦争法案許すな」「民主主義を守れ」なんかがありましたが、それが国民全体の大きな共感を得て全体を覆すようなムーブメントになったかというと、疑問が残ります。今こそ「消費増税許すな」デモを仕掛けるチャンスで、これぞ野党が支持を得られるイシューだと思うんですよね。まぁ、どうせやっていく内に「アベは退陣を!」みたいなデモに変化するのは予想がついてしまいますが。