ライフ

世の中は「簡単なこと」ができない人たちで溢れている

中川:ネットのスキルが高いということは、ネットで炎上させるくらいに日本はネットリテラシーが高いとも言えるわけですか?

橘:PIAACの結果を見るかぎり、相対的にはそうなんでしょうね。それでこんなに揉めてるんだから、ほかはどうなってるんだ、と心配になります。

『朝日ぎらい』で、本を読まずに堂々と“レビュー”を書くのが不思議というか不気味だったのですが、これはじつは“読まない”のではなく“読めない”んじゃないかと気づきました。著者は「本を読んでくれれば意図は通じる」と思っていますが、これは読める人のロジックで、世の中には読めないにもかかわらず、「この本は不愉快だ」と決めつける人がいる。その人数は私たちが漠然と思っているよりはるかに多くて、ネットで炎上させているのは彼らかもしれない。読めないし、自分で考えられないけど、なにかしないではいられないから、他人の罵詈雑言をひたすらコピペするんじゃないでしょうか。

中川:私は東京の公立中学校に通っていたのですが、中2のときに、それぞれの科目について何の意味があるのか、生徒たちの間で話し合ったことがあるんですよ。みんな数学の重要性は分かっていました。お店とかで買い物する時に計算がしやすいよう、数学はできた方が良いよねと。歴史とか地理は、観光する時により楽しくなるだろうし、県の並びなどを知っていると電車の運賃がいくらくらいかかるかが予想できるから必要、という考えを持っていました。だから算数と社会は大事だという認識はありました。

 そんな我々が国語の先生に聞いたのは、「なんでオレたち、日本語話せるのに、国語なんて勉強する必要があるんですか?」ということ。大学を卒業したばかりの若い女の先生だったのですが、みんなで先生を追及したんです。「こんな科目をやってもしょうがないじゃないですか!」と。なかには、数学のM先生とか地理・歴史のT先生のことは僕ら尊敬しているけど、あなたは尊敬できないと言いだす生徒も出てきました。するとこの若い先生は、「あのね、国語っていうのは、あなた達が大事だと思う数学や社会の問題を解くために必要なの。だから私は日本語を教えているの。そう思ってくれない?」と。「なるほど! そうだったんですか!」と途端にその先生の評価が上がりました。

橘:問題文を読めなかったら、どんな問題も解けるわけがないですよね。でも知識人やマスコミの人は、まわりに高い認知能力の人しかいないから、誰でも基礎的な読解力があるにちがいないと思っている。その前提から、そもそも間違っているんじゃないか。

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン