「スポーツ紙はその数字だけを見て、“絶好調”と報じていたが、ガチンコ力士として知られる妙義龍も北勝富士も、本場所でどう崩すかを研究していたはず。実際、最も集中している三番稽古の“最初の一番”では、どちらの力士も稀勢の里に勝っている。それを踏まえて本場所の取組を振り返ると、妙義龍も北勝富士も“稀勢の里の武器である左を封じる”という戦略が徹底できていた。出稽古でのシミュレーションを本場所で生かした」(同前)
3日目の西の支度部屋で、北勝富士の気合の入り方は半端ではなかった。出入り口前のスペースに付け人2人を立たせ、長時間にわたって本番さながらの立ち合いの練習を繰り返していた。右からの押っつけのあと、左のど輪──まさに結びの一番で稀勢の里を仕留めた攻め口だった。
「金星をあげた後の支度部屋で、北勝富士は場所前の三番稽古はあくまで稽古で、『(本場所でやろうとしていたことは)出さずにいた。企業秘密ですから』と、さらりとコメントしていた」(担当記者)
相手が進退の懸かった横綱であろうと、ガチンコ力士たちは全力でぶつかる。それが初日から横綱が4連敗するという前代未聞のドラマを生んだ。
ガチンコ横綱の稀勢の里が一人で綱を張っていたからこその“波乱劇”でもあった。
※週刊ポスト2018年11月30日号