田代は複雑な家庭で育ち、地の性格は暗いという。人と話すことも得意ではなく、緊張しいなのでサングラスも愛用している。しかし、才能を見出され若くしてスター街道を驀進。テレビに映るマーシーはいい意味でキマっていた。業界での評価も高く、ついたあだ名は“小道具の天才”。

 本質とかけ離れている偶像、キャラクターの修正を長年続けることはしんどい。だが、視聴者にとって偽りの部分こそが魅力的に映る。ヤンチャながらインテリジェンスも感じる芸風、影をひた隠す努力に光を見出す。ただ当人にとっては重荷でしかない。ついにはノイローゼに陥り、盗撮に走った。隠しておかなければならない性癖が歯車を狂わせる。

 その後の会見で、テレビリポーターに盗撮した理由を聞かれた田代は「『ミニにタコができる』というタイトルのギャグ映像を作ろうとしてた」と返答。これが伝説に……。

 番組では盗撮は事実と認めつつ、「ミニにタコ」発言は自分発信じゃないと弁明。謝罪しようとする田代に当時の事務所社長とフジテレビのスタッフが「ギャグで逃げちゃおうよ」とアドバイス。「マーシーっぽくいこうよ!」と迫られた結果、生まれたダジャレだったと話す。

 ここまではギリセーフ、芸能活動を継続。謹慎期間を終えたのち田代は徐々に復帰。しかし、心の健康が回復するはずはない。テレビ局でぐったりと休憩していると「元気ないっすね、田代さん。元気になるのありますよ」と知人のアシスタントプロデューサー。これがマーシーと覚せい剤の出会いだった。

 ここからはライク・ア・ローリング・ストーン状態、あっちゅうまに芸能人からドラッグ中毒者へ。5回の逮捕、計7年を刑務所で暮らした。そして現在、田代は民間の薬物依存リハビリ施設「ダルク」のスタッフに収まっている。

 淡々と書いてしまったが、番組中の端々で光った田代の“小道具”。井戸田がフリップを出すたび、服に仕込んだクリップを机に投げる。小沢が危険な発言をすると、胸ポケットからイエローカード。マーシーの芸はさびていなかった。時折、田代は儚げに「志村さんにお前はツッコミのリズムが良いと褒められたなぁ」と言葉をもらす。すると「天性のツッコミの間を持っていんたんですね!」とスピードワゴン。

 番組で井戸田と小沢はフラットに田代と接していた。これはなかなか難しいことだと思う。デリケートなマーシー案件、2人の舵取りがなければ、番組はここまで冴えなかった。

 田代により興味が湧いたので、他の動画をチェック。そこで発見したのが、覚せい剤についての語る講演の動画。

「やったことない人は覚せい剤の怖さがピンとこないと思う。そこで1番オレらしい答えが浮かんだ。1回やってみ、マーシーがなんでやめられなかったか分かるから。ただし、オレみたいになりますよ……」

 この一幕、どんな覚せい剤の体験談よりもゾッとした。

 あれほど巧みな話術で覚せい剤の恐ろしさを説ける人はいない。ワイドショーで発せられる「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」といったコメント。有識者は覚せい剤未経験者、これでは伝わらない。

 餅は餅屋、『まさし田代のシャブの話』は常套句ではなく体験談で覚せい剤を説く。何本もCMに出演していた人気者だったマーシーは覚せい剤で全てを失った。仕事、実績、お金、家族、恩人、健康、それでも未だに「目の前にあったら、やっちゃうかも」と話す。恐ろしいほどに魅力的、それだけに破滅的な覚せい剤。栄光と挫折を経験したマーシーはメディアでそのことを伝え続けなくてはならないと思う。

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