◆第2の北の湖になる!
「次の日本人横綱は貴景勝しかいない」と断言するのは好角家として知られる作家の高橋三千綱氏だ。
「番付のうえで近いのは大関の高安だが、彼はなれないと思う。カチ上げ気味の立ち合いと安定感のない引き技という、すっきりしない取り口が気に入らないので、横綱になってほしくないだけなんだけど(笑い)」
高橋氏は、横綱には“魅力的な個性”があってほしいと力を込める。
「貴景勝はハッキリ言って、体形も相撲も不細工です。モテそうになくて、僕は『ウシガエル貴景勝』と呼んでいる。ウシガエルは何でも食ってしまう悪役なんですよ。あのふてぶてしさがいいじゃないですか。貴景勝にはかつての北の湖のような、憎たらしいほど強い横綱になれる“見た目の素質”がある」
だが、気懸かりな点もある。実は、昨年1月の入幕以来、「寄り切り」で勝ったことが一度もないのだ。
力士の取り口には大きく「突き押し相撲」と「四つ相撲」の2タイプがあるが、綱を張るには「四つに組んで勝てる力士」であるべき──これは、貴景勝の師匠にして平成の大横綱と呼ばれた貴乃花の“教え”だ。
「2016年に豪栄道が全勝で初優勝した秋場所後の巡業中、当時の巡業部長だった貴乃花親方が豪栄道に『突き押しはもういい。これだけ力がついたのだから、これからは四つ相撲の稽古をした方がいい』とアドバイスしていた」(前出・ベテラン記者)
突き押しが得意の力士であっても、綱を狙うなら「相手にまわしを与えても勝てる取り口」が必要という考え方だ。元師匠の教えを実践できるかが、貴景勝の今後の課題だろう。