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2018.11.30 11:00  週刊ポスト

【著者に訊け】畑野智美氏『神さまを待っている』

 面接官のセクハラ紛いの言動を嫌って内定先を蹴り、結局就職できなかった愛は、派遣先で真面目に働き、それなりに評価も得てきた。退社後は友人の結婚式等々で出費がかさみ、派遣の単発仕事で食い繋いだものの、貯金はあと僅か。それでも愛は同じ静岡の高校出身で大学も一緒だった男友達の〈雨宮〉ら、親しい友人にも〈助けて〉と言えない性格なのだ。

「女子が結婚式に参列するのがいかに大変か、男性は想像つかないようですが、毎回同じ服では出られないし、ヘアセット代等、お金がどんどん出ていく。地方出身の派遣社員で慶弔費がかさめば、派遣切りに遭わなくても干上がりますよね。

 ただ、そういうことって友達には言えないんですよ。私もフリーター時代はお金がない同士で遊ぶ方が気は楽でした。自分を正当化したくて、生活レベルの違う友人を避けてしまっていたんです。仕事や結婚、学歴やお金のあるなしまで、何にでも線を引き、上と下を作りたがる人間は、特に相手が同い年だと、共感や比較に走りがちなので」

◆「自己責任論」ではどうにもならない

 愛にも悪循環から抜けるチャンスはあった。特に区の福祉課に勤務する雨宮は読者から見てもいいヤツで、なぜ彼に相談しないのかと苛々するほど。が、母の死後、元愛人と再婚し、異母弟だけを溺愛する父親に絶望して育った愛は男性の叱責を過剰に恐れ、今の生活を〈雨宮だけにはばれたくない。絶対に怒られるし、今度こそ本気で軽蔑される〉と思ってしまうのだ。

 またある時は愛の丁寧な仕事を評価してくれた短期の派遣先に、彼女は寝坊して行くことができなかった。実社会に戻れそうな愛を妬み、マユがスマホのアラームを止めてしまったからだ。

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