《自己責任の自覚を欠いた、無謀かつ無責任な行動が、政府や関係機関などに、大きな無用の負担をかけている。深刻に反省すべき問題である》(2004年4月13日)

《政府・与党内には、救出費用の一部の負担を本人に求めるべきだという議論もある。これは検討に値する》(2004年4月19日)

◆戦地取材は「税金泥棒」?

 当時、イラク・バグダッドで取材を続けていた映像ジャーナリストの綿井健陽さんは、日本における人質事件の報道を見てわが目を疑った。

「拘束されていた日本人が解放された時、イラクの地元メディアや海外メディアは一様にわが事のように喜んだんです。ところが日本の報道を見ると、拘束された3人が激しく非難されていました。3人が帰国する際は日本の空港に『税金泥棒』『自業自得』という紙を掲げた人が現れて、新聞や雑誌でも自己責任論キャンペーンが張られていた。それらを海外メディアのかたに伝えると、『なぜ彼らが非難されないといけないんだ』と驚いていました」

 国内の反応を知った綿井さんは、「日本社会は変わった」と実感したという。

「1960年代から1970年代のベトナム戦争では、世界中のジャーナリストが戦地で犠牲になり、日本人ジャーナリストも14人亡くなっています。当時は“戦場に散った者”という扱いで、戦地で亡くなったかたがたは少なくとも“殉職”扱いでした。ところが2004年のイラク人質事件をきっかけに、報道に対する社会の見方が一変しました」(綿井さん)

 戦地を取材するジャーナリストに「税金泥棒」との非難が集中するのも、日本ならではの光景だ。

「そもそもヨーロッパでは、戦地や紛争地で、その地に生きる人の権利や幸せのために活動することは、ジャーナリストや報道関係者にとっては当たり前のことだと考えられています。自国内であろうが、海外であろうが報道の使命は変わりません。そして、戦地に向かう彼らが現地で命を落としたり、拘束されるのは『職業上のリスクとしてあり得ること』との認識が社会の中で共有されていて、大きく騒がれません。

 ましてや日本政府や外務省には日本人の生命や財産を守る邦人保護の義務があり、ジャーナリストに限らず、誰であっても日本国籍を持つ人を保護するのは当然です。“勝手に行ったやつに税金を使うな”と自己責任を問う声は、外国でもまったくゼロではないにせよ、日本のようにワイドショーで大々的に放送されることはあり得ません」(綿井さん)

※女性セブン2018年12月13日号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン