国内

元刑事「泥棒を吐かせるにはあめ玉をしゃぶらせないと」

常習犯の泥棒を吐かせるには?

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、泥棒に自供させる方法を元刑事が詳細に明かす。

 * * *
「調べ室(取調室)を禁煙にする時、真っ先に反対したのは捜査三課ですよ」

 長年、窃盗犯を担当してきた捜査三課の元刑事は、犯人の落とし方について聞くと、そう切り出した。

「常習犯は浮いてる時間が長いほど、ヤマをたくさん持っている。これを1つ1つ吐かせるには、あめ玉をしゃぶらせないとね」

“浮いてる”とは、刑務所から出て外(シャバ)にいること。つまりシャバの空気を吸っている時間が長いほど、常習犯は犯罪件数を重ねているのだそうだ。

「常習犯には『ドロ刑‐警視庁捜査三課-』(日本テレビ系)の大泥棒みたいに、怪盗○○とか、第○号とか呼び名がついてるやつもいてね。ただ名前がつくやつほどなかなか口を割らない。捕まっても逮捕された案件1件だけで終わり。後は知りませんということになると、せっかくのミケタ星がね…」

 1人の泥棒が三桁の数の犯行を自供して上申書を書き、原票が100枚以上になることを「ミケタ星」という。ミケタ星の泥棒を捕まえると、それだけで署は検挙率の月間ノルマ達成、しばらくは左ウチワになれたのだ。

 上申書は犯人が犯罪行為の内容などを書くものだが、書かせたからといって原票が切れるわけではない。原票には、被害に遭った人が最寄りの警察署に被害届を出したことで被害を認知する「認知原票」と、検挙した時に切れる「検挙原票」がある。ミケタ星にはこの検挙原票が必要だ。

 たとえば認知原票を持つA署とは違うB署の刑事が、犯人を逮捕したとする。犯人が自供し上申書を書くと、刑事は現場となった場所を犯人に案内させ、犯行の様子などを説明させるための「引き当たり」を行う。そこで「こいつの犯行に間違いない」となれば、刑事はA署に被害届をくれるよう申し出る。

 ところが自分の署で解決したかったA署は、「なんでそいつの犯行とわかったのか」と尋ねてきて、「はい、そうですか」と簡単には被害届を渡さない。B署が上申書や引き当たりを行い、きちんと確認したことがわかったところで「じゃあしょうがない。持って行っていいよ」ということになる。そこで被害届を受け取って検挙原票を切り、原票として計上して始めて、刑事と署の実績になるのが検挙率の仕組みだ。

「三角のガラスの破り方や雨樋からの侵入の仕方とか、これはあいつの手口だろうというのが、こっちでもわかるんですがね。指紋がない、盗品も残っていない、余罪となる犯行現場がわからないでは、自供させるしかない。吐かせるにはコミュニケーションなんですよ」

 刑事と泥棒が仲良くなるのはさすがにドラマの中だけだが、彼らの生い立ちを聞いて「やっているのは悪いことだが、お前だけが悪いわけじゃないな」と同情したり、言い分を聞いてやったりして心を開かせる。“共感”というあめ玉をしゃぶらせるのだ。

 だが“本物”のあめ玉はもっと効果的だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン