ライフ

『安倍公房とわたし』著者女優・山口果林が語る「人生の書棚」

山口果林氏は本に囲まれて育った(写真:五十嵐美弥)

 私は兜町にあった「千代田書店」という、界隈の証券会社の人にお馴染みの本屋の四女として生まれました。小学校4年生までは家と店が同じ建物だったので文字通り本に囲まれて育ち、小さい頃は、挿絵がとても可愛かった箱入りの世界児童文学全集に夢中になりました。ただ、偉人伝は好きじゃなかった。ちょっとへそ曲がりなところが私にはあって、立派すぎる人は受け付けなかったのかもしれません(笑)。押し入れを自分の部屋のように使い、そこに蛍光灯をつけて本を読んでいました。それが実に至福の時間でした。

 そのあと肺の病気が見つかり、4年生の2学期、3学期を静岡県にある養護学校の寄宿舎で過ごすのですが、寮母さんが寝る前に読んでくれた冒険小説に夢中になりました。女の子なのに自分の感性に合い、「アルセーヌ・ルパンが私の恋人」と言っていたくらいです。『鉄仮面』、『巌窟王』、『ソロモン王の洞窟』などいろいろ読みましたが、なかでも影響を受けたのが『十五少年漂流記』(新潮文庫)。冒険心を刺激され、周囲の山の中を歩き回ったりしました。この取材を受けるにあたって読み返したのですが、ある少年が、実は自分のいたずらが漂流の原因になってしまったことをみんなに告白する場面にきたら、昔と同じように泣いてしまって。この歳で泣ける自分が喜びでしたけれど(笑)。

 中学に入るとエラリー・クイーン、アガサ・クリスティなどの本格推理小説に夢中になり、高校2、3年生の頃にはサルトル、カミュなどの実存主義にハマりました。時代の空気に敏感な同級生に影響されたんですね。桐朋学園大学演劇科に進んでからは、映画でも演劇でも刺激を与えてくれそうなものは何でも観たし、文学では安部公房、三島由紀夫、大江健三郎を耽読しました。

◆やっぱり紙の本じゃなくちゃ(笑)

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン