鈴木:暴対法のときは、左翼と組んで銀座で派手なデモもやりましたよね。ヤクザの姐さんたちが、「私たちにも『生存権』(第25条)がある」と訴えたりして。

溝口:もっとも裁判自体は、1995年に阪神淡路大震災があって、山口組が炊き出しとかやって評判が上がったときに、渡辺芳則・五代目組長が「こんな大変な時にワシらが迷惑かけるわけにはいかん」と取り下げてしまった。

鈴木:暴力団の裁判と言えば、2004年に広島市が市営住宅に入っている暴力団を追い出すことになって、市と組員の間で裁判になったこともありました。このときに「暴力団であることを理由に一定の条件で排除したとしても差別には当たらない」という判例が出て、法的実績を作った。それが2010年以降に全国の自治体で暴排条例が出来ていく流れに繋がりました。

溝口:兵庫県西宮市でも、暴力団組員が市営住宅を追われて裁判になった例がありました。このときは組員が「法の下の平等」や「居住の自由」(第22条1項)を主張して最高裁まで争ったが、2015年に「組員は暴力団を脱退すればいいのだから憲法違反に当たらない」として訴えは棄却された。

鈴木:もっとも、電気も水道も止められないし、新幹線や飛行機にも乗れるし、最低限の生存権は今でも認められてはいるんですよね。ヤクザの側も、三代目山口組の田岡一雄組長が「正業を持て」と繰り返し言ったのは、法律に触れない仕事を持てということ。たとえば、博奕は裏の仕事で法律上はアウトだから、土建業みたいな表の仕事をしましょうと。それで仕事をして、最低限の税金だって納めている組員が大半です。

溝口:そもそも多くの人が誤解しているけども、「結社の自由」は憲法で認められているし、何より暴対法という法律そのものが、「指定暴力団」という形で暴力団の存在を認めている。認めた上で、たとえば用心棒代を取ったら中止命令が出て、それを聞かずに繰り返したら懲役や罰金を科すと定めたわけです。イタリアや香港では、マフィアは結社の自由の除外規定に該当して存在自体が認められていない。そこが日本の暴力団の特殊性です。

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン