二世俳優たちの多くが壁にぶつかっていく中、平岳大は実績や評価を地道に積み重ねてきている。その姿は、役者の先輩として、母親として、佐久間の目にはどう映っているのだろう。
「元々、『二世』であることが嫌だったんですよ、あの人は。暁星中学のサッカー部で活躍しても、結局は自分の後ろにいる二人の両親の名前の方が浸透している。そのことが嫌で、『自分の力でやる』ということで外国に行きましたから。
俳優としては、よく勉強しているとは思います。今は時代劇にも出ていますが、よく分かっているように見えます。高校の時からアメリカに行って、医者を目指していたのが文学的な方向に行って点数を落として。そうやっていろいろと勉強したことが、役者として幅広くさせているような。頼もしい……というより『まあまあ、やっているな』という感じでしょうか。
岳大も無事にそれなりに大きな役をやれていますから別に心配することはないですし、今はとにかく自分のことだけで。何より健康が一番ですから」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2019年1月18・25日号