『ガチンコ』は話題性のある番組だった反面、繰り返し“やらせ”問題がクローズアップされ、しかも何度か当事者たちの証言によって“ほぼ確定”しまいました。それ以外でも、「ケンカをけしかけるような演出や暴力的なシーンへの苦情が多かった」など、コンプライアンスやハラスメントが叫ばれる現在の状況にフィットしない感もあります。『初耳学』を制作しているMBSも、放送しているTBSも、『ガチンコ』と比較されることは本意ではないでしょう。
一方で、台本通りに進行するバラエティーへの嫌悪感が強い現在の視聴者にとって、『ガチンコ』の緊張感やドラマ性は魅力的なもの。『初耳学』の「パリコレ学」「女子アナ学院」は、その魅力を生かすために、「強い言葉を放っても品の良さは保っている」「愛情をにじませるカットをはさむ」などの配慮を施して現在版にアップデートしているのです。その意味では、同じドキュメントバラエティーでも、『ガチンコ』より、モーニング娘。らを輩出した『ASAYAN』(テレビ東京系)に近いのかもしれません。
ただ、「放送時間の大半がVTRの番組に林先生は必要なのか」「申し訳程度に残した雑学の意味は?」「『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)と同じで、看板に偽りあり」などの厳しい声も飛ぶなど、まだまだ波乱含み。過激な演出に頼れない中、「どこまで緊張感やドラマ性を視聴者に感じさせられるのか」が、今後の鍵を握っているのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。