『ふりかえれば、未来が見える』より。画像は編集部で加工
〈私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒やし難い傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます〉(映像より)
沈痛な面持ちで手紙の朗読を聞いていた元慰安婦の一人はハンカチで顔を覆って激しく嗚咽した──。
いま、慰安婦問題を巡って再び日韓が“衝突”している。火をつけたのは国会議長の「天皇謝罪要求」だが、これには伏線があった。
契機となったのが1月30日付の米紙ニューヨークタイムスの記事だった。同紙ソウル支局長チェ・サンフン氏が、元慰安婦である金福童さん(享年92)の死亡記事で「(日本政府は元慰安婦の)女性への正式謝罪や補償を拒絶し続けてきた」などと書いたのだ。日本外務省はこれに即座に反応し、大菅岳史・報道官は「日本政府は数多くの機会において元慰安婦に対する誠実な謝罪と悔恨の念を伝えてきた」との反論を公表した。議長が米メディアで発言したのはこの直後だった。
日本政府は正式謝罪や補償を拒絶し続けてきた──それが“嘘”であることを証明しているのが、冒頭に紹介した秘蔵映像だ。橋本首相の手紙の言葉を、元慰安婦たちが真剣な表情で聞き入るシーンは印象的だ。
当時、日本は1995年に設立された「アジア女性基金」を通じ、慰安婦問題の解決を目指していた。償い金の支給や、首相の手紙を元慰安婦に渡す活動に取り組んできたのだ。しかし、韓国世論は冷淡だった。
「実はこのプラザホテルでのアジア女性基金のセレモニーは、参加した元慰安婦の名前も公表せず極秘裏に行なわれた。韓国では女性基金の活動に対して激しいバッシングが起き、韓国の市民活動家たちからは『日本の汚い金を受け取るな』と口汚い攻撃があったからです」(基金関係者)