「このままでは、本当に会社が危ない」。当時、課長だった著者は、信頼できる仲間7人に声をかけ、「『金と女のスキャンダル』にまみれた権力者のもう一つの素顔」をあぶり出し、「マル秘の『塩路会長ファイル』」を作ってはマスコミにリーク。「フォーカス」に掲載された愛人とのツーショットは、その成果のひとつだった。
塩路が失脚したあと、しかし彼ら8人の改革者は、経営陣から怖れられ、遠ざけられ、みんな日産を去っていった。彼らが戦っていた本当の相手は、会社の危機を他人事としてしか捉えられない日産の企業体質そのものだったのだろう。義憤と悲哀、理想と挫折が織り成す、痛快だが胸の痛む戦いの記録である。
※週刊ポスト2019年3月8日号