“話し方と伝わり方”を熟知している久米さんは、私のキャピキャピした声を聞いて、「こりゃいかん」と思ったんでしょう。他にも「笑うな」「原稿をそのまま読むな」と、久米さんからはダメ出しの嵐でした。

 何しろワイドショー担当でしたから、堅いニュースの読み方が分からない。それまでスポーツ紙を開いていた人が、ようやく全国紙を読み始めたレベルで、知識もない。

 そんな私の姿勢が根本から変わったきっかけが、1985年の年末特番でした。この年の8月12日に起きた日航機墜落事故の特集です。

 私は羽田からの中継を担当したんですが、モニターを観て鳥肌が立ちました。搭乗者名簿に従い、女性の席にはヒールの靴、お子さんの席には小さな靴が、スタジオに520足ずらりと並べてあったんです。

 久米さんご自身のアイデアで、映像の力を見せつけられました。あの瞬間、私は『ニュースステーション』と恋に落ちたんです。

※週刊ポスト3月29日号

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