3月14日、国民生活センターが8年ぶりに公表したインプラントに関するトラブルの相談。件数はやや減少傾向にあるが、深刻なものが多い。
80代女性は、歯科医の勧めで健康な歯を抜き、インプラントに置き換えたという。その後、大学病院で「顎の骨が腐食し始めている」と診断された。顎骨壊死(がつこつえし)と呼ばれる深刻な症状である。疼痛や膿に加え、顎の骨が腐って露出してしまうのだ。
女性は、骨粗鬆症の治療薬=BP製剤を服用していたが、これがインプラント手術時に顎骨壊死を引き起こすリスクがあった。手術前に、女性は薬手帳を歯科医に渡していたが、特に考慮されることはなかったという。
インプラント治療の先駆者で歯科医を指導する小宮山彌太郎氏(ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター院長)が、ずさんな手術に警鐘を鳴らす。
「BP製剤のリスクは、歯科医の間で広く周知されていますし、女性の主治医と連携をしっかり取って、指示に従うべきでした。顎骨壊死には、手術時の衛生状態も深く関係していますので、歯科医の姿勢が問われています」
●レポート/ジャーナリスト・岩澤倫彦(『やってはいけない歯科治療』著者)
※週刊ポスト2019年4月5日号