芸能

『新しい王様』 芸プロ批判の一方で武田玲奈の透明感たるや

全17話で構成される(番組公式HPより)

 これも深夜ドラマゆえに可能になった自由な表現、ということだろうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
「もうそんな時代じゃないんだって。ドラマも大手事務所から持ち回りで主演俳優を出して、小さい役も同じ大手事務所の新人で埋める。そういうのは視聴者に見透かされているんだよ。バカにされるんだよ。わかんないの? バカにされたら視聴者もスポンサーも離れていくよ。番組作りにも透明性と競争原理を導入しなきゃ。今あんたが言ったこと、全てが逆行しているんだよ」

 誰のセリフだと思われるでしょうか? 今放送中のテレビドラマの中で、大手芸能事務所社長に向かって投げられた言葉だと聞いたらあなたはどんな感想を抱くでしょう?

 たとえドラマという絵空事の中とはいえ、このシーンを見た時、私は正直胸がスッとしました。よく言った、と膝を叩きました。そして、架空の大手芸能事務所を、頭の中で現実の事務所の名前に置き換えつつドラマを楽しみました。

 このドラマ、今地上波で放送されている『新しい王様』です(TBS・Paravi共同制作)。まず最初にTBSの深夜枠でSeason1が放送され、続けてParavi(動画配信サービス)のネット配信でSeason2が公開されました(全17話)。そして今、地上波TBS(月曜夜1時58分)にてSeason2がオンエア中、という変則的なスタイル。

 その中身も従来の連ドラとは一味違った『新しい王様』。物語は……反対の価値観を持つ“二人の王様”が登場します。

 一人は「カネの力」や「所有する」ことに違和があり、新しい価値を見つけようとする自由人・アキバ。本心がどこにあるのか分からない複雑さも含め、藤原竜也がまさしくドンピシャのはまり役です。

 一方、カネやモノや女へのあくなき欲望をギラギラとストレートに追求する、ファンド会社代表・越中。演じるのはこれまたピタリの香川照之。全く違う価値観を持つ、アキバと越中。その「2人の王様」が、テレビ局の買収にむけて手を組みTOB(株式公開買付)を仕掛け……という展開。

 経済ドラマでも業界お仕事系でもなく、そのいずれでもあるような。ぐぐっと引きこまれる、見たことのない不思議なドラマ世界。象徴的なのが冒頭に引用したセリフです。

 テレビ局や芸能事務所のもたれあいを痛烈に揶揄するシーンあり、金まみれ世界のばかばかしさを笑い飛ばすシーンあり。クソ真面目な説教調ではなく社会の構造を俯瞰しつつ、時にコミカル、時にシニカル、クリティカルな手法で企業や組織のお粗末さ、ファンドの薄っぺらさ、コキ使われる人間の哀しさを描き出していきます。

 少なくともこれまでテレビ局が作るドラマの中において、自身の業界や芸能事務所に対する辛辣な批判や皮肉を、繰り返し語らせたドラマがあったでしょうか?

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン