「口の中や喉の奥などの粘膜の表面が角質化(硬化)して白く変化する疾患です。舌や歯肉、頬の内側、喉、そして食道まで様々な部位に発症します。白板症を放置すると約5~10%ががんに変わるとされ、『前がん病変』と呼ばれます」
飲酒や喫煙、入れ歯や歯の被せ物などによる粘膜への慢性的な刺激が代表的な原因で、特に中高年男性に多いという。
「自然に治る白板症も数%存在し、がん化するかどうかの個人差が大きい。短い人だと数か月、長い人だと20数年の“潜伏期間”が報告されている」(秋津医院院長の秋津壽男医師)
吉田の場合はがん化した段階で発見されたが、“がん化するかどうかわからない白板症”もある。
「自然治癒するものもあるので、白板症だと判明した時点ですべてを切除する必要はありません。まずは細胞診、または組織診で悪性(がん)かどうかを調べてもらうこと。悪性だと診断されなければ切除せずに経過観察で良いでしょう。ただしその場合、年1回は口腔外科などに通い、がん化していないかどうかを診てもらう必要がある」(秋津氏)
病変が小さい白板症は口内炎と見分けがつきにくい。しかも口内炎と違って痛みなどの自覚症状がほとんどないため、放置してしまうケースが少なくない。
都内在住の坪井淑雄氏(仮名・68歳)は“がんサバイバー”の1人だ。