●「韓国からの投資引き上げ」には大義名分がある
「韓国からの投資引き上げは、現行制度の範囲内で実行できる案です。外為法には『国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき』にはさまざまな手が打てると規定されているので、閣議決定して対韓直接投資を規制すればいい。
韓国は、日韓請求権協定(1965年)で元徴用工への補償は解決済みなのに、それを反故にして、日本企業の資産を差し押さえた。これでは日本企業は韓国で安心して経済活動ができません。だから、韓国への投資を規制するというのは筋が通っている。報復措置に大義名分があるということです。
実際に、昨年の日本からの対韓直接投資は約3割も減少しています。投資の引き上げはすでに始まっているので、日本企業もこの報復措置に理解を示すでしょう」
韓国が再報復で、日本から投資を引き上げたとしても、日本から韓国への直接投資残高は3兆7694億円(2015年末)であるのに対し、韓国から日本への直接投資残高は3843億円(同)で、およそ10分の1の規模に過ぎない。日本側のダメージは微々たるものだ。
1997年のアジア通貨危機で、韓国がIMF(国際通貨基金)管理国家になったのは、海外からの投資が一斉に引き上げたのが一因だった。韓国にとってIMF管理国家になったというのはトラウマであり、実際にそこまで追い込まなくても文在寅政権には十分なダメージとなる。
もっとも、日本側の報復措置とはまったく別の方法で韓国が再報復をしてくる可能性も十分ある。やられたからやりかえせで、お互いに報復を繰り返せば、行き着く先は国交断絶だ。
日本側としては、韓国経済の破綻や断交を望んでいるわけではなく、この問題を放置して何ら対策をしようとしない文政権を動かすことが目的であろう。文政権に圧力をかけるうえで、経済や貿易の分野ではなく、政治的な報復措置も多数挙げられている。それらについてもいずれレポートしたい。
◆取材・文/清水典之(フリーライター)