もうひとつの関心事は名跡の襲名だ。
「名前については、師匠からの連絡待ちですが、継ぐなら『幻の大名跡』でありたいと思っています。芸の内容はともかく、講談界のスポークスマンとしてこれだけ頑張った奴はいないという自負はありますし」
だが、青天井を思わせる今の人気については意外なことに「人気は水物、一時のもの」と冷静に答える。
「人気についてはもう冷め冷めですね。人気があるからといって芸が上達することはないですし。コツコツとネタを覚え、ちゃんとネタ下ろしをしているかどうか。それだけが講談師としての自分に対するぶれない評価基準です」
メディア出演などで稽古の時間が取れないことがストレスであり、新しいネタを覚えることが喜びだという。
「良いことのあとには悪いことがあり、悪いことのあとに良いことがある。そして最後にはみんな死ぬ(笑い)。今の人気もそのうちにぶり返しがきますよ」
35歳にしては老成したこの人生観には小学生のときの父親の他界が少なからず影響している。
「昨日まで明るく笑っていた小学生が急に『死』というものを考えさせられ、有無を言わさず大人にさせられる。そりゃ冷めちゃいますよ。でも、この経験がなければ絶対に芸人になっていなかったし、この経験が熟成して芸人としての陰影を育んだのだと思います」