国内

国公立大医学部に異変 「東大・京大より地元医学部」顕著に

大学受験で地方の国公立大医学部を目指す傾向が年々強まっている

大学受験で地方の国公立大医学部を目指す傾向が年々強まっている

 医師不足が叫ばれて久しいが、近年の大学受験を振り返ってみると、国公立大学の医学部人気が続き、各大学とも定員を増やしているという。その背景とは何か──。大学通信・常務取締役の安田賢治氏が、「国公立大学医学部合格高校ランキング」とともにレポートする。

 * * *
 国公立大医学部人気が続いている。特に西日本を中心に進学トップ校での人気が高い。きっかけとなったのは、医学部の定員増だ。

 2006年に医師不足が深刻な自治体を対象に「新医師確保総合対策」が実施され、さらに2007年に「緊急医師確保対策」により全都道府県での定員増が認められるようになった。その結果、2008年から医学部定員が増え、その後も増加が続いている。

 この対策が始まる前に7625人が定員だったが、今年は9420人になった。この間1555人、20%以上定員が増えたことになる。医学部を新設した東北医科薬科大、国際医療福祉大を除き、全大学が定員を増やしている。

 もっとも増やしたのは順天堂大で90人から50人増えて140人になった。国公立大では福島県立医科大が80人から130人、筑波大が100人から140人に増やしている。

 いうまでもなく医学部は最難関学部だが、定員が増えている一方で、少子化により受験生数は減っていることから、国公立大医学部が以前より入りやすくなった。受験生も難関大の理学部や工学部に進学しても、大学院に進学するのが当たり前になりつつあり、修業年限が6年なら国公立大の医学部に進学しようとの考えが広がっていった。そのうえ、近年の高校生は「困っている人を助けたい」考えが強く、医師はうってつけの職業だ。

 それだけではない。保護者の考えが変わってきたこともある。少子化で子どもの数が少なく、できるだけ手元に置いておきたい気持ちが強くなった。受験生も地元大学進学を第一に考えるようになったが、地方では優秀な理系学生の就職先が限られることも影響し、その結果、東大、京大の医学部を除く理系より、地元の国公立大の医学部を目指す傾向が強くなったのだ。しかも、医師免許を入手すれば、地元に戻って医師として働くことも可能だ。

 難易度でも東大、京大の理系に合格できる力があれば、合格可能な国公立大医学部は少なくない。特に手に職をつけたいと考える女子受験生に、医学部人気が高まっている。その結果、東大、京大より医学部との考えが強くなってきた。東大の地元関東地方からの入学者が増えている。

 また、中高一貫校では保護者が医師という場合も多く医学部人気は高い。最近では難関中高で、文系、理系分けの際に理系を選ぶ生徒が多いという。進路指導教諭が「増えているのは理系というより医系」というほどの人気ぶりだ。山中伸弥京大教授が2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことも人気に拍車をかけた。医学の分野で研究という道もあることが分かったからだ。

 その人気の国公立大医学部に強い学校はどこなのだろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
“もしトラ”リスクも…(写真/AFP=時事)
【緊迫する中東情勢】イラン・イスラエルの報復合戦、エスカレートすれば日本にも影響 “もしトラ”リスクが顕在化
週刊ポスト