私たちのマス席は西方で通路のすぐ横。それはたまたまトランプ氏らが出入りする通路だった。朝乃山関への表彰が終わって退場する時、思わず、私たち4人が「Mr.President!」と声をかけるとトランプ氏がニコニコしながら近づいてきて、金美齢さんと握手をしてくれた。
私も手を出すと、大きな手でぐっと握ってきた。カサカサしていて、アスリートのような手だった。私は、野球選手の手のようだと思ったが、考えたらトランプ氏はゴルフの腕前がシングルなので、それはゴルフ選手の手だったのだろう。私のあと櫻井さんも握手したが、富家氏だけがしそびれてしまった。
するとそのシーンがテレビで生中継されており、「安倍首相が国民の税金を使って、自分の知り合いを招待した」などというデマがネットで流布されたわけである。私は、毎日新聞から取材を受けて、「ああ、こうやってデマは“拡散”されていくのか」と思った。いや、毎日は取材を入れてくるだけ、まだマシなのかもしれない。
しかし、毎日新聞は、彼らにとっての“疑惑”を写真つきで増幅させるような記事を書いてきた。また、相撲観戦中のトランプ氏を揶揄(やゆ)するような記事(〈トランプ氏大相撲観戦 手をたたく姿皆無、腕を組む場面も 観客「何を考えたのだろう」という声も〉5月26日18時40分)も書いた。
要するに彼らは日米の蜜月にどうしても冷水を浴びせたいのである。このトランプ氏への厚遇に、毎日新聞が〈長期の国益にかなうのか〉という社説を掲げた(5月28日付)のも頷ける。
彼らの“願い”どおり、仮に中国が日米関係に楔を打ち込むことができれば、「その時」から尖閣をはじめ、日本の危機は始まる。そのことがわかっているからこそ、国民はトランプ氏を大歓迎し、天皇皇后両陛下も温かく出迎えた。
明らかに中国サイドに立ってきた朝日新聞や毎日新聞には、逆にこれらがどうしても気に入らないのである。トランプ氏に対する歓待ぶりに、いちいち皮肉に満ちた否定的な報道を展開している所以がそこにある。
覇権国家・中国の利益を願い、中国に「愛(う)いヤツ」と頭を撫でられ、ひたすら彼(か)の国の国益に叶う記事を書きつづける日本の新聞。そんな日本の新聞はネットの発展と共に、国民に呆れられ、窘(たしな)められ、部数を激減させてきたのである。
私はこのほど、『新聞という病』を産経新聞出版から上梓した。日本にとって、新聞がいかに「国民の敵」になっているかという実態を炙り出し、これに絶対に騙されないための本である。
私は、世の新聞記者たちに聞きたい。「もし中国に先にトランプ氏が搦(から)めとられていたとしたら…、というのを想像したことがありますか」と。
この「安倍―トランプ」の関係が、もし「習近平―トランプ」だったら、どうなるのかということである。日米の強固な同盟関係に中国は歯ぎしりしている。米中貿易戦争まで発展している現状と、日本と米国との関係のあまりの「差」に地団駄を踏んでいる。
朝日新聞や毎日新聞ならいざ知らず、まともな感覚を持つ日本国民として、中国を喜ばせる報道をつづける「その先」をどう想像しているのか、という意味でもある。私は、国民の思いや利益に相反する日本のこうした新聞が、果たして今後、「生き残ること」ができるのだろうか、と思う。
私自身が巻き込まれた騒動で、日本の新聞がなぜ「国民の敵」なのか、より明確になった。拙著『新聞という病』で、皆様には、是非、そのことを確認していただきたく思う。