だが時代はうつろう。バイパスと高速道路で道筋が変れば客は激減する。家族経営で過剰投資をせず、地元の客がついていたドライブインだけが生き残った。そういう店を訪ね歩くうち著者は、自分はドライブイン好きというより、人の話を聞くことが好きなのだと気づく。それは高度成長と安定成長時代を、街道沿いから見つめつづけた人々の思い出話である。働きながらデフレ時代に老いた人々のつぶやきである。またドライブインの客と経営者が、無意識の共同作業で織り上げた「時代の物語」である。
七百枚近い大著だが飽きない。淡々と語る人々とそれを記録する書き手との間に、日本の懐かしい時代が、すなわち「歴史」が読み取れるからである。
※週刊ポスト2019年6月7日号