卒業後は東京の大手飲食グループ企業に就職し、全国の漁師から直接魚を買い付ける業務を担当。ここで甲斐さんは日本の魚と漁業を学び、「価値のない魚に価値を見出す」ことの楽しさ、重要性を知ったのだった。
「ぼくは自分を魚と人をつなぐ通訳者だと思ってます。たとえばウツボは、姿形がグロテスクすぎて“食べる”なんて誰も考えない。でも、臭みもないしたたきにするとコリコリと抜群においしくて、食べた人はみんなびっくりします」(甲斐さん)
価値なき魚の価値を見つけるのと同時に、漁をコントロールして海の生態系維持を図ることが必要だと、甲斐さんは言う。
「最近のサバ缶人気でサバの子まで根こそぎ水揚げされて価格が高騰し始めています。流行り廃りに左右されて乱獲を続けると、結局人間が困るんです。サバ缶ブームも早晩、必ず終わる。あとに残るのは、行き場を失ったサバ缶という名の深刻な食品ロスです。今年のサバ缶製造はあと○個作ったら終わり! と制限する勇気が必要だと思います」
※女性セブン2019年6月13日号