「僕自身、体にイイことをしている意識は特にないし、人生の意味を見出したりも全然しない。作家なら少しは含蓄のあることでも書けよって自分でも思いますけど、そこに酔っちゃうと、もう笑えないでしょ」

 辛うじて見出せた真実は〈走ると、痩せます〉くらいだと松久氏は笑い、減量目的、モテ目的で始まったラン生活は、憎からず思う相手にやっと素直になれた中年男の純愛すら思わせる。たとえ動機は不純だろうと、純粋に好きを貫く姿は痛快そのもので、やはり好きに理屈は要らないのである。

【プロフィール】まつひさ・あつし/1968年東京生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。出版社を経て作家、編集者として幅広く活躍。『男の出産』『どうでもいい歌』『もういっかい彼女』等の他、松久淳+田中渉名義の『天国の本屋』や『ラブコメ』は映画化もされ話題に。2010年に第13回みうらじゅん賞。「みうらさんは僕が横浜マラソンに出た時、テレビをずっと見てくれていて。『マラソンって何キロ?』と聞かれた時はさすがに驚いたけど、マジなんです(笑い)」。170cm、60kg、A型。

構成■橋本紀子 撮影■国府田利光

※週刊ポスト2019年7月12日号

走る奴なんて馬鹿だと思ってた

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