国内

上皇陛下「病状を包み隠さず国民に伝えてほしい」と主張された

今年6月、都内のテニスクラブをご訪問(撮影/横田紋子)

 現在、上皇陛下は公務から離れられ、皇居内の生物学研究所で専門のハゼの研究を続けられたり、美智子さまと共に都内のテニスクラブをお忍びで訪問されたりと、日々を慈しむように過ごされている。だが、陛下は「がんサバイバー」としてのお姿もある。

 陛下の前立腺がんが見つかったのは、2002年末のことだった。検査結果について、当時の皇室医務主管だった金沢一郎さんは会見でこう説明した。

「お採りした組織の病理検査の結果、前立腺にがん細胞の存在が確認された。高分化型腫瘍で、比較的たちのよい腫瘍で転移はないと判断される。関係する医師の協議の結果、前立腺全摘出手術をお受けいただくこととした。手術は東京大学医学部附属病院で、東大病院と国立がんセンターの合同チームが行う」

 ステージ(進行度)について記者から質問が飛ぶと、「真ん中ぐらい」(金沢さん)と答えたので、ステージII程度だったと推測される。

 翌年1月18日、東大病院で、手術を受けられた。この時、陛下に病名を伝え、治療方針やリスクについて説明し、手術を取り仕切ったのが、国立がんセンター名誉総長の垣添忠生さん(78才)だった。

 がんの専門医としてがんセンターに長年勤務し、中央病院長や総長を歴任してきた垣添さんは、医師人生をがん治療に捧げてきた人物だ。

「手術に際しては、前立腺の絵を描いて、それをご覧いただきながらがんがあると思われる場所をお伝えし、手術や放射線治療など、考えられる治療方法についてご説明しました。

 結果的にはありませんでしたが、前立腺を摘出することで尿失禁が起きる可能性があります。そういったリスクも含めて、治療はどういう経緯をたどることが想定されるのか、包み隠さずお話ししました。それをお聞きになったうえで陛下は、『わかりました、お願いします』とおっしゃいました」(垣添さん)

 一般的に、がんの告知を冷静に受け入れることができる患者は少ないとされている。特に告知されてからの2週間は「魔の2週間」と呼ばれ、受診結果が信じられず、セカンドオピニオンを受診したり、うつ病になったりするリスクがもっとも高まる期間だという。

「陛下は常に冷静でいらして、私どもが提案した治療方針に真摯に耳を傾け、受け入れてくださいました。陛下はサイエンティストでもいらっしゃるから、がんとわかっても客観的に、科学的にご自分の体を見つめていらっしゃるのだと感じました」(垣添さん)

 治療や病状の説明へのご質問や異論を口にされることはほぼなかった陛下が、1つだけ強く主張されたことがあるという。

「それは、ご自身の病状や手術の経過を『包み隠さず国民に伝えてほしい』ということでした」(垣添さん)

 皇室ジャーナリストの神田秀一さんは、上皇陛下の意図をこう解説する。

関連記事

トピックス

「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン